「在宅ケアハラ」対策強化 茨城県、介護の離職防止 相談窓口や対応指針
在宅ケアに携わる介護や看護の従事者が安心して働く環境を整えるため、茨城県は本年度、「在宅ケアハラスメント」(在宅ケアハラ)の防止に向けた対策に乗り出す。専門の相談窓口を新設するほか、ガイドライン策定を通して事業所ごとの対応を強化し、離職防止につなげる。窓口は6月末までに設置する計画で、指針も合わせて策定する。
在宅ケアの普及に伴い、利用者から従事者への嫌がらせなどが問題となってきた。県は昨年6月、在宅ケアに関連する事業者を対象に調査を実施。協力した84事業者のうち、半数を超すの53.6%が「これまでに利用者からハラスメントを受けた」と回答した。
県によると、在宅でのケアは施設に比べ密室になりやすい分、被害が起きやすいという。
具体的には「蹴る」「つばを吐く」などの身体的被害に加え、「怒鳴る」「特定の職員に理不尽なサービスを要求する」などの精神的被害、「必要がない場面で抱きつく」「性的な話をする」などの性的被害まで、幅広い内容だった。
介護労働安定センターが2022年度に実施した調査では、県内25事業所のうち88%が訪問介護員に「不足感がある」と答え、在宅ケアに関わる人材不足が課題となってきた。県は「利用者からのハラスメントが離職につながるケースもある」とみる。
こうした状況から、県は6月末までに電話やメールなどによる相談窓口を設置する。外部委託し、介護福祉士などの資格を持つ専門家らが対応。在宅ケアハラを受けた従事者の悩みや不安の解消に努める。状況に応じ、現場に同行して支援することも視野に入れ、事業所の相談にも応じる。
相談内容は市町村に情報提供する方針。高齢者支援について話し合う「地域ケア会議」など協議の場で検討し、被害をなくす対策につなげる。さらにポスターやチラシなどで事業所や職員に窓口開設を周知し、11月11日の介護の日に合わせ、県民への啓発にも取り組む。
ガイドラインは事業所の対応指針で、昨年9月ごろから策定に向け準備を進めてきた。指針では「ハラスメント対策は事業所の責務」とし、事業所ごとの基本方針やマニュアルを作成し、職場での共有を働きかける。職場内の対応窓口設置など、従事者が1人で抱え込まない環境づくりなどを推進する。
県長寿福祉課の担当者は「従事者が安心して働ける体制を築き、離職防止に結び付けたい」と話している。