金高騰で押し買い被害 茨城県内相談増 相場より安値提示 能登支援装う例も
個人宅を訪れて貴金属を強引に買い取る「押し買い」被害の相談が増えている。背景に金価格の高騰があるとみられ、高値買い取りをうたいながら実際には相場より安く買い取る「誇大広告」も。茨城県消費生活センターは「きっぱり断って」と注意を呼びかけている。
金の店頭販売価格は右肩上がりで、地金大手の田中貴金属工業(東京)によると、2019年は1グラム当たり4691円(3月平均値)だったが、24年には同1万428円(同)に上昇。今月16日には同1万3063円と、国内の金小売価格の指標としては過去最高値を記録した。中東情勢の悪化などを背景に、安全資産とされる金の価格は今後も高止まりする見通しだ。
金価格の高騰を背景に、押し買いを含む「訪問購入」に関する相談も増加。県消費生活センターへ寄せられた相談件数は18~21年度には11~23件で推移していたが、22年度は42件とほぼ倍増となり、23年度も44件に上った。
貴金属類の押し買いを巡る相談の中には、能登半島地震の被災地支援を装って「支援物資を集めている。古着や食器でも何でも買い取る」と勧誘されて訪問を受け入れたものの、実際に訪れた業者から貴金属類を出すよう執拗(しつよう)に求められたケースもあった。
同センターは「承諾していない貴金属の売却を迫られたら、きっぱり断ってほしい」と呼びかけている。
優良誤認とみられる広告も目立っており、「金・プラチナ・シルバー製品 通常買い取り価格より20%アップ」などとうたいながら、実際には相場より大幅に安く買い取る店もあるという。こうした広告について、日本広告審査機構(JARO)は「消費者の誤認を招く恐れがあり、適切とはいえない」としている。同センターにも、貴金属類を売却した人から「相場よりも安いのではないか」などの相談が23年度に8件寄せられた。
「つくばや質店」(同県つくば市東新井)では、別の店舗で50万円ほどの査定を受けた数十点の貴金属類を約200万円で買い取ったことがあったという。五位渕猛社長(42)は、対策として「事前の情報収集や他店との比較が必要」と話した。