ボタン魅せられ35年 つくば牡丹園 関浩一園長 独自の栽培技術磨く 茨城
ボタンやシャクヤクの名所で知られる「つくば牡丹(ぼたん)園」(茨城県つくば市若栗)が今年で開園35周年を迎えた。花に魅せられ、園の運営を続けてきた園長の関浩一さん(63)は独自の栽培技術を磨き続け、2022年には博士号を取得。「これからもボタンの美を追究したい」と意気込んでいる。
牡丹園は1989年に開園。500株から始まったが、品種・株数ともに増やし、今では早咲きから遅咲きまでのボタン300種1万株、シャクヤク500種5万株を栽培する。
関さんは開園当初から花の管理を任されていたが、鮮やかな赤色が目を引く「芳紀(ほうき)」という名のボタンに一目ぼれ。以来35年間にわたり、花々をいかに元気に育て美しく咲かせるかを考え続けてきた。
知人の大学教授や愛好家たちの助言を基に独学で栽培技術を磨いてきた。こだわりは開園当初から続く農薬を使わない栽培だ。繊細で難しいとされるボタン栽培は苦難の連続だったが、「自分なりに高い技術を習得し、花を育ててきた」と胸を張る。
園の運営は決して楽ではなかった。2008年のリーマン・ショックでは好調だった客足が遠のき、入園者数はピーク時の約2割に落ち込んだ。東日本大震災では風評被害にも苦しんだ。
「自身の栽培技術を論理立てて証明したい」。園を取り巻く環境は厳しさを増していたが、栽培に懸ける思いは変わらないまま。14年に茨城大大学院に進学して修士号を取得すると、さらに東京農工大大学院連合農学研究科に移り、22年には博士課程(農学)の学位も取った。
大学院生として学ぶ傍ら、19年には馬ふんと稲わらを使った堆肥販売にも乗り出した。独自の発酵技術で微生物を増殖させた堆肥の販売を通して「栽培で最も重視する土づくりのノウハウを全国に広めたい」。農家の喜ぶ姿が活動の原動力だ。
高低差のある里山の自然を生かした園内は、子どもたちにとって最高の学び場。新型コロナウイルスが流行した20年以降は再び厳しい状況に置かれたが、遊びに来た子どもたちが楽しそうに走り回る姿を見て自身を奮い立たせた。
新型コロナの5類移行から約1年。今年は来園者の回復に期待を寄せる。積み重ねた栽培技術で育て上げたボタンは、今年も鮮やかな花を咲かせ始めているという。
関さんは「土づくりにこだわってこそ、花が健康になり、大輪になる」と語る。ボタンを誰よりもきれいに咲かせたい-。その情熱が枯れることはない。