あしなが奨学金不足 申請増、茨城県内6割超不採用 返済不要の給付型導入
病気や災害で親を亡くした遺児などの進学を支援する「あしなが高校奨学金」が資金不足に陥っている。2023年度から給付型となり、物価高なども加わったことで申請者が増加したが、本年度の茨城県内採用者は申請29人のうち11人と4割に満たず、奨学金制度を実施するあしなが育英会(東京)が危機感を強めている。
あしなが高校奨学金は、保護者が病気や災害などで亡くなったり、重い障害を抱えたりして経済的な援助が必要な中高生を対象に実施。これまで給付と貸与を併用していた奨学金が、23年度から返済が必要ない全額給付型に変わった。給付額は公私立を問わず月額3万円。私立高の入学一時金30万円は貸与型。
同会によると、県内の中学3年生が申請する「予約採用」では、22年度に16人だった申請者が24年度は29人に増加した。だが、採用者は23年度が申請19人のうち5人、24年度は申請29人のうち11人。採用率は2年連続で4割に満たない状況だ。全国の申請者も22年度の1215人から24年度は過去最多の1800人に増加、同年度の採用者は815人にとどまった。23年度申請者の保護者の平均年間所得は前年度比8%余り減少し約135万7000円だった。
同会によると、収入源は主に寄付金と返還された貸与金。採用率低下の要因について、同会は全額給付型に切り替えて学生1人当たりの支援を手厚くしたことや物価高騰が続いていることを挙げる。同会は「保護者の所得や家庭状況などを総合的に判断して採用の可否を決定している」としている。
小学生の時に父親をがんで亡くした常磐大3年の星明日望さん(20)は、同会の高校奨学金を活用して県内の高校に通い、在学中はアルバイトにも汗を流した。高校卒業後は小学校の教員を目指して大学奨学生となった。
星さんはJR水戸駅ペデストリアンデッキで20日に実施された街頭募金にも参加し、駅利用者らに善意金を募った。「支援があったからこそ学校に通い夢を追える」と語り、「親がいてくれることが当たり前じゃない。支援を必要としている人がたくさんいることを理解してくれたらうれしい」と話した。
同会関東エリア担当の八木橋美郁(みく)さんは「募金活動を広めて遺児の存在を知ってもらうことで、支援の輪を広げていきたい」と語った。