《広角レンズ》茨城DC 企画に磨き 茨城県や自治体、事業者 定着と収益増探る
2023年行われた大型観光企画「茨城デスティネーションキャンペーン(DC)」の効果を生かし、茨城県への持続的な誘客につなげる取り組みが本格化している。大型連休に合わせ、一部の自治体や事業者は追加企画を打ち出し、収益拡大を模索。企画を一過性で終わらせないよう、県は集客や収益面で課題の洗い出しを急ぐ。
映画やドラマのロケ地となり、「爆発の聖地」とされる常陸大宮市小場の採石場で4月28日、爆破体験イベントが開かれた。コスプレーヤーや新郎新婦、親子連れら約40人が参加。爆発の光と音、熱風、ガソリンの臭いを感じ取った観衆が「すごい」と興奮した声を上げた。
爆破体験は、DCでも県内ロケ地を巡るツアーの一環として開催された。「企画が報道され、注目度が上がった」。主催者で、火薬を使った特殊効果を手がける「スカイテック」(土浦市)の野沢勇人社長(62)は効果を口にする。
今回はセメントを吹き飛ばす爆破企画を追加した。「イベントを定着させるには、事業と収益の拡大が必要」。野沢社長は今後、安定して利益が見込めるツアー商品の造成を目指し、県に旅行会社とのつなぎ役を求める考えだ。
■DCはJRグループ6社と自治体が連携した大型観光企画。23年10~12月、市町村や観光団体などがアイデアを出し、482の体験企画を県内各地で実施した。
海の波を光で彩る「ナイトウェーブ」(大洗町)は3日間で4万人が来場。夜のロケ施設を使った「演劇と肝試しな夜」(つくばみらい市)、鹿島港内から工業団地の夜景を望む「ナイトクルーズ」(神栖市)などは予約が定員を超えた。
DCの目的は期間中の誘客に加え、茨城県ならではの体験観光をいかに定着させるか。斬新な企画に挑戦し、課題を探る狙いもある。
竜神大吊橋の星空鑑賞会が好評だった常陸太田市は4月27日から、金、土曜と祝日前のライトアップを始めた。市の担当者は「夜間でも工夫次第で観光客を呼び込める」と手応えを語り、「夏はビアブリッジを予定している。一年を通して客を呼び込む企画づくりに取り組みたい」と意気込む。
■県はDC企画の継続性を高めるため、課題の分析を進める。高収益だった企画は、開催回数の増加や天候対策などを検討。集客性の高い企画は収益増につなげるため、駐車場の有料化や入場料アップなどを地域や事業者に提案する。改善が見込めれば、10月開幕のアフターデスティネーションキャンペーンで効果を確認する方針。
このほか観光客のニーズに応える観光企画の開発に向け、用意した補助制度の活用を事業者に促す。
大井川和彦知事は「(DCを)一過性で終わらせないためには、当事者の努力をどう引き出し、後押しするかが県の課題」とし、県観光戦略課の谷越敦子課長は「DCで得た情報を共有した上で企画を磨き上げ、事業者を支援していく」と話した。