農家に助っ人 作業通し理解 繁忙期にボランティア 190人登録 茨城・つくば市
ボランティアの力を借りて労働力不足に悩む農家を支援する「援農」の取り組みが茨城県つくば市で行われている。「人手が欲しい」という農家にとっては大きな助っ人。ボランティアにとっても土に触れながら食と農を学ぶ絶好の機会となっている。
4月27日朝、つくば市大砂の畑で、農家の海老沢秀雄さん(66)がトウモロコシの種まきを始めた。作業を手伝うのは市内に住む鎌田美由紀さん(56)。「熊本の実家が農家だったので、もともと土に触れるのが好き」と鎌田さん。この日は2時間弱の作業で、種を丁寧にまいていった。
鎌田さんは、市が取り組む「農業サポート事業」のサポーターだ。
サポーターは市のホームページから人手を募集している生産者を選び、直接連絡を取り合って農作業の手伝いに出向く。収穫した野菜などを生産者から頂くことがあるが、報酬や交通費は一切支払われない。
■食を見直す
事業は2008年度に始まり、鎌田さんは10年ほど前にサポーター登録した。これまでブルーベリー農家など約10軒を手伝ってきた。
「採れたての新鮮なトウモロコシを食べさせてもらった時は感動した。サポーター活動は食について見つめ直すきっかけにもなる。〝お互いさまの精神〟でこれかもお手伝いしていきたい」と話す。
市農業政策課によると、サポーターは市内外に関係なく登録でき、現在190人いる。一方、事業を利用する農家数は例年8~12人。昨年度は10人の農家が繁忙期の作業などを手伝ってもらった。
毎年5~6月、ソラマメの収穫でサポーターを募集する同市篠崎の高津三郎さん(76)は「選定と箱詰めが大変なので、毎年3人のサポーターさんに来てもらっている。大変ありがたい」と謝意を示す。
通年栽培のネギをはじめ、サトイモやホウレンソウなどさまざまな野菜を栽培する同市柳橋の柳橋成一さん(67)方には、この十数年で約40人弱のサポーターが訪れた。
■「交流は財産」
柳橋さんの手伝いを続けている川上英夫さん(74)と山崎真沙紀さん(65)は市内から定期的に通い続けている。
「自宅で家庭菜園をやっていて、農家の仕事に関心があった。体力維持にもつながる」と川上さん。山崎さんは「手伝ったことが形になるので達成感がある。農家さんから感謝されることもうれしい」と活動の理由を語る。
柳橋さんは「作付けから収穫、除草作業。お願いすれば、何でもきちんとやってくれる。中には中学生も来てくれた」とし、「たくさんの人との交流は財産だ」と強調する。
市によると、市内の農業者数は2020年時点で3828人。15年前に比べて4割強も減った。年齢は60~70代以上が圧倒的に多いという。
市の担当者は「つくば市では農地も減っていて、新たに転入してくる市民と農家さんとの間に距離ができている。サポート事業を通じ、農業に対する消費者の理解が深まってくれれば」と期待を寄せる。