特定空き家、対策進む 特措法10年 官民連携模索 茨城
倒壊の恐れがあるなど「特定空き家」を自治体が撤去できるよう定めた空き家対策特別措置法の成立から、間もなく10年を迎える。昨年12月に施行された改正法では、放置すれば特定空き家になる恐れがある物件を「管理不全空き家」と定めるなど対策が強化された。茨城県内でも空き家問題は深刻化し、活用拡大へ新たな官民連携を模索する動きも出始めている。
同県桜川市は昨年度、同市西小塙の木造2階建て住宅を特定空き家に認定した。老朽化が進み、崩れかかった外壁には補強用の板が20本以上打ち付けられている。
市都市整備課によると、空き家の所有者は不明。以前から「危ない」と苦情が寄せられていた。同課の担当者は「通学路に隣接し、交通量もある。このままでは周囲に危害を与えかねない」と危惧する。
昨年6月から指導や勧告などを行い、今月中には所有者不明のまま強制撤去する「略式代執行」を市内で初めて実施する方針。国土交通省によると、県内の特定空き家などに対する略式代執行や行政代執行は、2022年度までに計16件あった。
少子高齢化の影響で空き家問題は深刻化している。
総務省の住宅・土地統計調査(速報値)によると、賃貸や売却用、別荘など「二次的住宅」を除いた県内の空き家は23年10月時点で9万3400戸。5年前の前回調査から1万5200戸増えた。
これまで県内の自治体では、14年11月に成立した特措法に基づく「空き家等対策計画」の策定が進み、23年4月時点で43市町村が策定した。一方、昨年12月には改正法が施行され、自治体が管理不全空き家を認定する制度などが新設された。勧告を受ければ、特定空き家と同様に固定資産税の軽減対象外となる。
これを受け「管理不全空き家と特定空き家の線引きを今後決める」(同県筑西市環境課)といった動きが自治体に広がる。県住宅課の担当者は「市町村が円滑に運用できるように支援、連携していきたい」と話す。
改正法では、自治体がNPO法人などを「空き家等管理活用支援法人」に指定する制度も始まった。民間法人が公的立場から活動しやすい環境を整備し、自治体の補完的な役割を果たしてもらうのが狙いだ。
同県小美玉市は今年2月、県宅地建物取引業協会を支援法人に指定した。市環境課の担当者は「市が運営する空き家バンクの物件などにつながればいい」と期待を寄せる。
空き家の相談窓口や管理を担うNPO法人「ふるさと空き家相談・サポート」(同県水戸市)の古谷まち子代表は「指定があれば受けたい」とし、「自治体と空き家所有者の情報を共有できれば、利点は多いだろう」と述べた。