第二幸の実園 指定停止 障害者支援施設 身体や経済的虐待 茨城県
茨城県東海村石神内宿の指定障害者支援施設「第二幸の実園」で、職員が利用者に暴行したり、金銭を不当に徴収したりするなどの虐待が確認されたとして、県は17日、3カ月間の指定効力の全部停止処分とした。障害者総合支援法に基づく処分では指定取り消しに次いで重く、事業停止処分に相当する。県が障害者支援施設に行うのは初めて。
県によると、指定停止するのは、社会福祉法人愛信会(村上忠夫理事長)が運営する重度の知的障害者ら49人が入所する障害者支援施設と、中軽度の知的障害者ら4人が入所するグループホーム。2008~21年の虐待計19件を認定した。虐待を巡り「継続性、組織的関与、理事長の関わり」があったとし、事態を重く見た。
具体的には、職員1人が4人に殴るなど暴力を加えた。また施設で複数人に対し、承諾を得ない日時に農作業などに従事させていた。身体的虐待のほかにも、職員が利用者9人の預かり金から計約250万円を詐取▽理事長所有の建物に設置したヒノキ風呂について複数の利用者から了承のないまま整備費計約87万円を徴収▽職員6人の台湾旅行代の一部計約18万円を利用者5人が負担-など経済的虐待もあったとする。
処分により行政からの給付金約4500万円が停止され、利用者の移転などが必要になる可能性があるとして、県は発効までに猶予を設け、期間を8月18日~11月17日とした。
県障害福祉課の森田教司課長は「虐待は決して許されない。障害者を支援する施設で起きたことは誠に遺憾」と話した。一方、施設側は代理人弁護士を通じて「事実関係が異なり、大いに問題がある。運営になんら問題はなく、全ての事業所で通常運営を継続する」とのコメントを出した。
■被害、トラブル通報相次ぐ 県、20年に立ち入り調査
県が指定停止処分を通知した障害者支援施設「第二幸の実園」では、2020年ごろから施設幹部や職員らによる暴行など利用者への虐待行為を指摘する声が上がっていた。
施設関係者の一人は茨城新聞の取材に、「利用者を廊下で引きずっていた」「利用者が『こんにちは』とあいさつしたら、(職員が)『あっちいけよ』と答えていた」などと語った。
「被害」のトラブルの通報は同年から少なくとも4件あった。利用者に聞き取りした東海村の資料によると、「たたかれた。なんで?」「上の人が手を出したことがあり、怒りが収まらない」「ご飯がもらえない」「やり過ぎた部分があって困る」といった声が寄せられていた。
県や村は20年6、12月に施設に立ち入り調査。21年1月には文書で改善を求める指導も行った。
村資料などによると、県が虐待と認めた利用者は19年、施設職員に顔を蹴られ病院に運ばれたが、病院側には「利用者同士のトラブル」と説明された。また、利用者が野菜生産に従事する際、午前9時~午後3時に作業する規定だったが、実際は施設側が午前6時~午後5時に作業させたという。
虐待防止に詳しい筑波大の大村美保助教(障害科学域)は「県は処分を決定し、役割と責務を着実に果たしたと考える」と評価。「この事案が指導の在り方を再考するきっかけとなり、同様の事案の抑止につながることを期待する」と話した。