大般若経の断片発見 茨城県内で初「智感版」 常陸太田・文殊院
茨城県常陸太田市天神林町の寺「文殊院」で、室町時代に刷られた経典「智感版(ちかんばん)・大般若経(だいはんにゃきょう)」の断片が見つかった。全国的にも希少で、県内で確認されたのは初めて。中世に常陸国を治めた佐竹氏の有力家臣、小野崎氏が寄進したものだという。市が30日までに発表した。
市などによると、智感版は室町幕府将軍家の足利氏が僧、智感に彫らせた木版から刷られた大般若経。今回見つかったのは、大般若経全600巻のうちの第291巻の巻末で縦24センチ、横43センチ。断片には「応永八年」(1401年)の年紀や小野崎氏の名が記されている。
市民グループ「常陸佐竹研究会」の会員が2019年11月、江戸時代の国学者、色川三中(みなか)の書物に、小野崎氏が寄進した大般若経が文殊院に移されていると書かれていることを見つけ、地元の天神林町会に調査を依頼。同町会が文殊院の須弥壇(しゅみだん)の下から大量の経典類を発見した。
その後、古文書の保存などを行う「茨城史料ネット(茨城文化財・歴史資料救済・保全ネットワーク)が調査し、23年11月、経典類の中から今回の断片を見つけたという。
調査した茨城大の高橋修教授は「室町時代の経典が見つかるのは珍しい。佐竹氏に従っていた小野崎氏が、佐竹氏を飛び越えて直接、足利氏とやりとりできたことが分かる」などど話した。
経典の調査は続いており、今回見つかった断片などを展示する特別展「経典が語る 常陸奥郡の中世」が7月5~8日に同県水戸市文京の茨城大学図書館展示室で7、同月20日~8月18日に常陸太田市郷土資料館梅津会館で開かれる。