《リポート》「泳げる霞ケ浦」推進 茨城・阿見町、観光客誘致策探る VR体験や国体跡地活用
茨城県阿見町は霞ケ浦湖岸の立地を生かし、観光客の誘致策を探っている。霞ケ浦の水質改善を目指す国の導水事業の2030年完了をにらみ、町内外に「泳げる霞ケ浦」をアピールしようと、インターネット上の仮想空間「メタバース」や、茨城国体でセーリング競技会場となったスロープ跡地の利活用を模索する。
■浄化へ導水事業
国が主導する霞ケ浦導水事業は霞ケ浦と千波湖の水質浄化や河川の渇水対策などを目的とし、霞ケ浦と利根川、那珂川を地下トンネルで結び、水を行き来させる計画。30年の終了を予定する。地元では、同町や同県土浦市など21市町村で構成する霞ケ浦問題協議会が水質浄化に向け、無リン洗剤の使用促進や廃食用油の回収といった家庭排水対策を進めてきた。
同町は5月、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の理念に沿ってまちづくりを進める自治体として、内閣府が選定する「SDGs未来都市」に選ばれた。その上で町は霞ケ浦を生かす観光振興策「メタバース版 泳げる霞ケ浦 MyあみビーチVR(仮想現実)の構築」を提案した。
メタバースの同町公式空間では、スマートフォンやVRゴーグルを使って「2030泳げる霞ケ浦」を体験できるようにするという。定例会見で千葉繁町長は「阿見町が先駆者になる」と意欲を見せた。
町の構想では、泳げるようになった霞ケ浦の砂浜を再現するほか、ゼロ戦の飛行体験やスカイダイビング、ウオータースライダーの3次元(3D)映像を実装。現実の催しに出向くのが難しい人向けに、仮想のイベント会場を設けることも検討する。
■セーリング会場
同町大室地内の湖岸は、19年の茨城国体でセーリング競技の会場となった。コンクリートで覆われたスロープやフェンスに囲まれた桟橋の一部、駐車場が残り、「開催記念碑」が建てられている。
町の第7次総合計画基本構想では「霞ケ浦湖岸親水ゾーン」に位置付け、「多くの人々が訪れ、にぎわう、親水空間の創出を図るエリア」をうたっている。現在は稲敷広域消防本部が水難救助訓練などに利用するほか、有効な活用策を見いだせていない。
23年度策定された「国体跡地利活用個別方針」では、釣りや水陸両用バス発着場、オートキャンプ場、展望施設などの案が出された。それぞれの案について「事業者の参画が必須」「宿泊機能の強化に資する」「スロープは話題性がある」といった特徴が挙げられている。
町は同方針に基づき、観光需要や整備費用を見極めるため、24年度以降に民間事業者に聞き取りを行い、公募を実施する。