大洗の防潮堤 完成 水門建設、区間4.3キロ 6月末 茨城
東日本大震災を受け、茨城県が津波対策の一環として進めてきた県内の防潮堤整備で、残っていた茨城港大洗港区(同県大洗町)の工事が今月末に完了する。2013年の整備開始から約10年を経て、太平洋沿岸を守る重要なインフラが整う。県は「安心安全の一助になる」とする一方で、避難や防災意識など市町村と連携したソフト対策にも力を入れる。
同港区の防潮堤区間は約4.3キロで、高さは4.5~7.5メートル。同町の市街地や水産ふ頭地区(大洗漁港)を守る形で整備された。13年4月から整備に着手し、20年度末に完了する予定だったが、計画の一部変更などにより3年ほど遅れが出ていた。
道路が通る切れ目部分は、津波の際に水の浮力で閉まる「フラップゲート」などを採用。漁船が出入りするため、漁港入り口に高さ約30メートル、幅約20メートルの水門を建設した。震度5強以上や津波警報で、自動的に閉門する仕組みだ。
県は13年度から順次、防潮堤整備を進めてきた。海岸や河川、港湾、漁港の後背地など、住宅や幹線道路を控えた特に緊急性の高い箇所で新規建設やかさ上げを実施。総延長約53キロ、事業費600億円超で、主に震災復興に関わる国の交付金を活用した。
同区の当初計画案では、防潮堤の一部が漁港の船着き場より陸側を通り、魚市場や漁協の関連施設が集まるエリアと分断する形となり、関係者から懸念の声が上がった。そのため海側への整備に切り替え、水門を設置することにした。
ホテルや旅館が立ち並ぶ宮下地区の海岸沿い約500メートル区間は、眺望などの問題で地元との協議が難航。今回の計画からは外れたが、県は「丁寧に説明を続けていきたい」とする。
防潮堤は数十~百数十年に1度の頻度で発生が予想される最大4.2メートルの「レベル1(L1)」津波を想定。数百~千年に1度の頻度とされる最大14.8メートルの「レベル2(L2)」津波には、避難に軸を置いたソフト対策が求められる。
県は12年8月、L2を想定した新たな津波浸水想定区域を公表した。沿岸10市町村はハザードマップ改定や津波避難タワー、避難の案内標識の整備、避難訓練などに注力。県も啓発イベントなど、ソフト事業に取り組んできた。
防潮堤の完成に、同町漁協の臼庭明伸参事は「町も漁港も船も守られる理想の形になった」と歓迎。県土木部の担当者は「安心安全の一助になるが、緊急時の避難は最も重要。今後も市町村と連携し、防災意識の向上に努めたい」とした。