有機農業推進へ始動 茨城県内の3市 年度内「宣言」目指す
茨城県の石岡、かすみがうら、笠間の3市が、生産から消費まで地域ぐるみで有機農業を推進するモデル地区を目指して動き出した。本年度中に「オーガニックビレッジ宣言」を行いたい考え。3市はそれぞれ検討会を開き、具体的な実施計画の策定に向けて始動。学校給食への提供を検討するなど、有機農業の普及拡大を狙う。
農林水産省によると、同宣言をしているのは2023年度現在、全国で93市町村。農業者などによる検討会の開催や試行的な取り組みを経て、5年間の有機農業実践計画を策定する。その上で、国からの承認を得て宣言する流れだ。昨年、県内で初めて常陸大宮市が宣言した。
石岡市では先月31日、有機農業の産地づくりに向け、初の検討会を開いた。市の担当者は「計画策定後、市全体でどう取り組むかが大事」と地域全体での実践を強調。有機栽培部会のあるJAやさとをはじめ県、市の担当者など13人が集まり、本年度の計画を確認した。
同宣言への取り組みに先駆け、同市は22年、「ゼロカーボンシティ宣言」を表明。50年までに二酸化炭素排出量の実質ゼロを目標とする。23年には、同部会の32戸が、日本農業賞の大賞を受賞。地域資源を生かして有機農業を推進してきた実績が認められた。
かすみがうら市は今冬の宣言に向け準備が進む。計画では28年度までに、年間を通じて有機米「コシヒカリ」の給食への提供を目標とし、有機栽培の水田を10ヘクタールまで拡大したい考えだ。
生産者や有識者などが集まった検討会を7月に開き、学校給食への有機農産物の提供の流れや、計画書の方向性を確認するという。今秋以降は、試行的に市内全小中学校(義務教育学校含む)の給食に、有機米と有機栽培のニンジンを提供する。
同市も昨年、「ゼロカーボンシティ宣言」をした。自治体や農業団体などで構成する「全国オーガニック給食協議会」(事務局・千葉県いすみ市)に加盟する。
笠間市も本年度中の宣言を目指す。7月に総会を開き、生産拡大や販売戦略など、生産者らが主体となり、計画を策定する予定だ。同市の主な農産物はコメと栗。市担当者は「まずはコメから始める。宣言を出すことで、地道に有機農業の裾野を広げたい」と話す。
同宣言は農水省が全国のモデル地区に対して支援する取り組み。「みどりの食料システム戦略推進交付金」により、栽培技術の実証や販路拡大など、有機農業の拡大に向けた事業を支援する。同省は25年までに全国で100市町村、30年までに200市町村の宣言を目標に掲げる。