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盲導犬育成続け10年 パートナー、一人でも多く いばらき協会

基礎的な誘導訓練に取り組む水谷由美さん(右)と磯崎塁さん=ひたちなか市東石川
基礎的な誘導訓練に取り組む水谷由美さん(右)と磯崎塁さん=ひたちなか市東石川


目が見えない人々の生活を支える盲導犬の訓練施設「いばらき盲導犬協会」(茨城県ひたちなか市東石川)が、国の訓練機関に指定されて今年で10年を迎えた。全体の3割程度しか適性がないとされる中、これまでに15頭を育成しユーザーの元へ送り出した。盲導犬は全国的に不足しており、今後も育成を進めたい考えだ。

■訓練は半年以上

「グッド! グッド!」。5月下旬、ひたちなか市内の路上。同協会の盲導犬歩行指導員の水谷由美さん(57)と盲導犬訓練士を目指す研修生の磯崎塁さん(21)が、障害物に見立てた三角コーンの前でピタリと止まったラブラドルレトリバー2頭に声をかけた。

2頭はこの日、段差や障害物を避けて人間を誘導する訓練中。人間との生活で必要な立ち居振る舞いを学ぶ基礎訓練も行っており、ユーザーと実施する訓練などを終えた後に社会へ出る。

水谷さんは「その場での判断力を養うため、自分でどうするか考えさせることを意識している」と話し、磯崎さんは「盲導犬を必要とする人が一人でも多くパートナーになれるよう、これからも頑張りたい」と意気込む。

■「候補犬」が不足

同協会は2012年に「全国盲導犬協会」として発足。14年には国家公安委員会の指定を受け、本格的な訓練に乗り出した。国内11番目の育成団体で、18年に現名称に変更した。

初めて世に送り出したのは雄のラブラドルレトリバー「ジョバンニ」(23年引退)。年間約10頭を訓練し、これまでに15頭が巣立った。このうち11頭が現在も各地の視覚障害者を支えている。

日本盲人社会福祉施設協議会(東京)の調査によると、全国の盲導犬実働頭数は796頭(24年3月末現在)だが、頭数は不足しているのが実情。同協会でも8人が盲導犬の到着を待つ。

供給が追い付かない理由の一つが、適性がある「候補犬」の不足だ。訓練期間は半年~1年ほどだが、活発すぎたり、大きな音を怖がったりするなど、実際に盲導犬になれるのは全体の3~4割程度。候補に漏れた犬は、災害救助犬や他分野の補助犬などへ活躍の場を移すためだ。

ユーザーと盲導犬の相性もある。お互いの体格や歩く速さ、利用者の生活スタイルに合致するか、細かい確認も必要という。

■理解促進へPR

身体障害者補助犬法では、公共施設や電車・バスなどの公共交通機関、ホテルやデパートなどは補助犬同伴での受け入れが義務付けられているが、いばらき盲導犬協会によると、断られることも少なくない。盲導犬と分からずに、ユーザーに声をかけずに犬を触るなどのトラブルもあるという。

盲導犬の理解促進は重要課題の一つになっており、同協会は、県内の商業施設や催しなどで、盲導犬の役割などをPR。斉藤つぎ代表理事は「今後も地道にPRを続け、一人でも多くの人に盲導犬やユーザーへの思いやりの気持ちを持ってもらいたい」と話した。



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