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伊藤公象さん死去 92歳 陶造形の草分け 茨城・笠間

陶造形の作品を手にする伊藤公象さん=2016年6月、笠間市福原
陶造形の作品を手にする伊藤公象さん=2016年6月、笠間市福原


陶造形作家の伊藤公象(いとう・こうしょう、本名・一成=かずなり)さんが6日、老衰のため茨城県笠間市内の自宅で死去した。92歳。葬儀は家族で済ませた。金沢美術工芸大名誉客員教授。

1932年、石川県金沢市の彫金家の家に生まれた。父親が40代で亡くなり、少年時代から母親とともに苦労して育った。10代で九谷焼の窯元に弟子入りするが、既存の陶芸の在り方に疑問を抱き、自ら陶表現を切り開く道を選んだ。

70年代初めに笠間市でアトリエを構え、陶を集合体で表現した作品を発表。陶片をくしゃくしゃに曲げた「多軟面体」をはじめ、「起土(きど)」「褶曲(しゅうきょく)」など新たな土の相を見いだし、独自の陶造形の方法も編み出した。

国内の美術館やギャラリーで精力的に展覧会を開いたほか、発表の場は海外にも及んだ。78年のインド・トリエンナーレ国際美術展でゴールドメダルに輝き、84年のベネチア・ビエンナーレ国際美術展では日本代表出品となった。

伊藤さんは2023年末に転倒し、車いす生活となった。体力が落ちても制作への情熱を持ち続け、ベッドに横になりながら土をいじったり、パソコンを開いて制作資料の整理などを行ったりした。郷里の石川県で起きた能登半島地震に心を痛めていたという。東京都庭園美術館で2~5月に開催された企画展にも出品し、4月には家族と会場を訪れていた。

09年から茨城新聞客員論説委員を務めていた。

20年以上交流のあった多摩美術大教授の外舘和子さん=茨城県つくば市在住=は、02年に英国で開かれた大規模個展で図録の執筆を担当したことを振り返り、「多軟面体への反応がすごく、日本陶芸の大きな可能性を感じた。ご冥福をお祈りします」と悼んだ。



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