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有人ロケット開発挑む オーストリア出身・アーロンさん 30年の商業飛行目標 茨城・つくば

再使用可能な有人ロケット開発を進めるレンシュ・アーロンさん=つくば市吾妻
再使用可能な有人ロケット開発を進めるレンシュ・アーロンさん=つくば市吾妻


茨城県つくば市で、オーストリア人男性が小型有人ロケットの開発に挑んでいる。再使用可能なロケットで低価格の宇宙旅行を実現させようと、2021年にベンチャー企業を設立。県のプロジェクトにも採択され、「変革期を迎える宇宙産業に技術で貢献したい」と30年の商業飛行を目指す。

男性はオーストリア・ウィーン出身のレンシュ・アーロンさん(53)。専門的に学べる環境がなかった同国の大学で機械工学を学びながら、図書館通いを続けて宇宙関連の知識を習得。大学院修士課程修了後は、航空宇宙技術研究所(現JAXA)やフランス国立宇宙センターなどの専門機関で研究を重ねてきた。

20年には経済産業省の「外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)」制度を活用し、茨城県第1号となる同ビザを取得。21年に同市で「オーブスペース」を設立した。

同社が開発するのは、高度200キロまで飛行する小型有人ロケット「インフィニティ」。地球の周回軌道に満たない高度まで上昇し、砲弾のような放物線を描いて地表に戻る「サブオービタル(準軌道)」と呼ばれる飛行方式。6分間の無重力状態が体験できる計画だ。

機体は3人乗りで、全長はJAXAの「H3」(最長63メートル)の7分の1程度。可動式発射台から垂直に打ち上げられ、帰還時は機体下部のエンジンを逆噴射させて減速し、着陸する仕組み。1機当たり千回の飛行を想定しているという。

「子どもの頃から星空を見るのが好きだった」とアーロンさん。同市で起業した理由について、日本が国全体で宇宙開発に力を入れている点を挙げる。中でも、県が19年に立ち上げた「いばらき宇宙ビジネス創造コンソーシアム」を挙げ、「茨城は宇宙ビジネスのプロジェクトに熱心」と話した。

同社は21年に「いばらき宇宙ビジネス事業化実証プロジェクト」に採択され、県と委託契約を締結。ロケットに搭載する制御システムの一部を開発しており、すでに振動や真空など一部の宇宙環境試験にも成功したという。

現在は機体の基本構造や燃料の種類、装置を構成する部品を決める予備設計を終えた段階だ。

誰もが宇宙へ行ける時代の到来に向け、アーロンさんは「まずはサブオービタルロケット開発を成功させ、その後、軌道打ち上げロケットに挑みたい」と意欲を見せる。



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