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挑戦と苦悩、山で着想 芥川賞受賞・松永K三蔵さん 久慈浜、干し芋 日立の記憶 茨城県出身

芥川賞を受賞した松永K三蔵さん=東京都内
芥川賞を受賞した松永K三蔵さん=東京都内


茨城県水戸市生まれの松永K三蔵さん(本名非公表)が芥川賞に決まった。受賞作は、六甲山と建装の職場を舞台に、山登りの面白さや会社組織で働く苦悩を題材にした山岳小説。「憧れの賞」を受賞し、「非常に大きな賞を頂いた。書く幅を広げ、改めて面白い純文学を書いてみたい」と抱負を語った。

受賞作「バリ山行」は、六甲山と建装の職場を舞台に、山登りの面白さや会社組織で働く苦悩を題材にした。約4年前に構想し、3年かけて書き上げた。

自身の山登りの体験が着想につながっている。「山を登っている間は純粋に山登りを楽しむわけでなく、いろいろなことを考える。自分の生活、仕事の悩みも当然湧き出す。(登山と)実社会が行き来する、そういう感覚を書いてみた」

中学2年の時、ロシアの文豪、ドストエフスキーの「罪と罰」を読み、刺激を受けて小説を書き始めた。文芸誌などへ作品応募を始めたのは20歳のころ。普段は建築関係の会社で働く。作家としてデビューして以降も、出勤前の朝、カフェなどで万年筆で執筆していたという。

水戸市で生まれ、母親の実家がある同県日立市で1~2歳ごろまで過ごした。兵庫県西宮市へ転居してからも時々茨城県を訪れ、「毎年、夏休みに(日立市の)久慈浜の海水浴場に連れていってもらった」と子ども時代を振り返る。「干し芋を食べると思い出がよみがえる。非常に思い入れが深い」と笑顔をのぞかせた。

筆名の「松永K三蔵」には家族愛が詰まっているという。英字の「K」は「身内の名前のイニシャルにKが多い。みんなの力を借りるような形で付けた」と説明する。

特に「三蔵」は、祖父の名前を何かに残そうと考え、筆名として引き継いだ。「茨城は(亡き)母と祖父の故郷。私にとって大事な場所」と思いを明かす。

今後については「純文学をずっと読み、書いてきた。ままならない社会だったり、世界だったり、そういったものにどう応え、立ち向かうのか。そういう人の姿を書いていきたいと思っている」と語った。



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