大久保鹿嶋神社 映画に氏子有志が製作 歴史や祭り、長編 茨城・日立 まちの成り立ちも
茨城県日立市大久保町にある大久保鹿嶋神社と周辺の歴史を描いた記録映画「鹿嶋神社と大久保~歴史と祭りと村の人々」が完成した。「地域の今と昔を後世に伝えたい」と、氏子有志でつくる「稲穂会」が製作した。江戸時代から続く流鏑馬(やぶさめ)などの祭事や、中世以降のまちの成り立ちなどをまとめた長編作品で、8月11日に上映会を開く。
市中央部の大久保地区(旧大久保村)には同神社や水戸藩の郷校「暇修館(かしゅうかん)」があり、古くから文化の拠点だった。七つの町内が現在も継承され、山側には平安から戦国時代に築かれた大窪、天神山、愛宕山の三つの城跡がある。
同神社の創立は701年。市内の鹿嶋神社で最も古く、毎年10月に行う流鏑馬は400年以上の歴史を持つ。境内の「駒つなぎのイチョウ」は、坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)が戦勝祈願した際に馬をつないだとの伝説があり、県の天然記念物に指定されている。
今回の映画製作で中心になったのは稲穂会会長の根本一弘さん(76)。「伝統ある祭事や住民に愛されている神社の杜(もり)を残したい」との思いから、2010年に個人的に撮影を始め、祭事や東日本大震災からの復興の歩みなどを撮りためてきた。
22年、記録映画にまとめることを稲穂会で呼びかけると「ぜひやろう」と賛同の声が上がり、製作委員会が発足。長年テレビCMの制作を手がけてきた根本さんが監督を務め、同神社の臼井悦郎宮司も全面的に協力した。
映画は神社の1年間の行事を縦軸に構成した。歴史については会員同士で古い文献の読書会を開いて理解を深め、河原子地区から始まった神社の成り立ちや、戦国時代に佐竹氏の北門の備えとして築城された大窪城など神社周辺の歴史も伝える。
また、住民の協力によって現在では幻となっている「大神輿(みこし)」が1984年に出社した際の貴重な映像も収録。「茨城のみこし十基」に選ばれてつくば科学万博(85年)の会場内を渡御した様子もあり、神社と密に関わる住民の暮らしや地域の風景も描く。
住民への取材で得た逸話もできるだけ多くナレーションで盛り込んだといい、製作マネジャーの小田倉富夫さん(69)は「地域の先輩たちから聞いたこぼれ話が作品に厚みを加えてくれた」と話す。
ロケは50日間、撮影時間は420時間に及んだ。城跡や神社の場所などを示す際に使う街並みの映像は「歴史のイメージに合うよう地べた感のある絵を心がけた」(根本さん)といい、ドローンだけでなく、マンションの屋上や丘陵地の団地などへ足を運んでカメラを回した。
作品は1時間10分。今後、図書館や周辺の学校に寄付する。上映会は8月11日、同市千石町の多賀市民会館で開く。根本さんは「多くの方に見てもらい、地域を知り、まちを活気づけたいという意識を広く共有できたらうれしい」と話す。