茨城県内自治体 半数止まり 要支援者避難体制整備
災害時の「逃げ遅れゼロ」を目指し、茨城県が2023年8月に改定した県第2次総合計画で、地域の要支援者を避難させる体制を整備した自治体が約半数の23市町村にとどまることが分かった。未整備の自治体は人員や移動手段、避難先の確保が課題だ。県は25年度末までに全市町村での整備を働きかける。
県によると、災害時に避難が困難な県内の要支援者は4月現在で14万4825人。このうち地域での支援が必要とされるのは、実際には自力で避難できる場合などを除いた3万1866人。
県は23年8月、県第2次総合計画の防災に関する指標を改定。災害時に住民の「逃げ遅れゼロ」を目指し、浸水想定区域や土砂災害警戒区域に住む要支援者を避難させるための支援体制を、県内全44市町村で整備する目標を掲げた。
支援体制は各自治体で異なる。例えば自治体が作成した「避難行動要支援者名簿」を基に、各地区の自治会や行政区が避難の支援者を決め、地域の支援体制を構築するケースなど。
人員不足などを理由に自治会などが対応できない場合は、民生委員や自主防災組織、消防団などに協力を要請する。最終手段として市町村職員が支援に当たる。
総合計画の改定時、すでに整備を終えていたのは、牛久市やひたちなか市など10市町村。今年3月末までに水戸市や日立市など13市町が体制を整えた。
利根川沿いで町内の9割以上が浸水想定区域の境町は、要支援者約1200人の住所や連絡先、避難先といった情報をリスト化。このうち地域の支援が必要な約250人は、町内54行政区ごとに区長や消防団員らが支援に当たる。
一方、整備が済んでいない自治体は21市町。避難所が自治体外に及んだり、移動手段の確保に見通しが立たないケースがあるという。
古河市は要支援者1万3千人のうち2900人に支援が必要とされるが、高齢化率の高い地区などでは支援者の確保が難航。市は早期の整備を目指し、「防災訓練などを通じて自主的な早期避難を市民に啓発していく」とする。
県防災・危機管理課は「災害はいつ起きるか分からない。要支援者の支援体制の確立は喫緊の課題」と強調。支援者の確保に地域の理解が必要として「既に体制を整備した事例の紹介や具体的な課題に対する助言を積極的に行い、全市町村の整備に取り組む」としている。