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立ち乗り車いす開発 26年の実用化目指す 筑波大発ベンチャー 茨城

「立ち乗り電動車いす」を開発した江口洋丞社長(左)ら=つくば市天王台
「立ち乗り電動車いす」を開発した江口洋丞社長(左)ら=つくば市天王台


筑波大発ベンチャー企業が、足に障害がある人向けの「立ち乗り電動車いす」を開発した。車いす下部に圧縮ガスを活用したばねがあり、利用者の起立や立位保持を支援する。動作の幅を広げて利用者の生活の質向上を図るのが狙いで、2026年の実用化を目指している。

立ち乗り電動車いすは、座った状態で全長96センチ、幅55センチ、高さ75センチ程度。重さは約60キロで通常の電動車いすとほぼ同じ。モーターで動き、手元のレバーで操縦する。最大時速は6キロ。1回の充電で約16キロ走行できる。

座位から立位へ変わる際には座席下にある圧縮ガスのロックを外すことでばねが解放され、膝部分の回転軸を中心に座席が動き、起立姿勢を保持する仕組み。利用者は胴体を傾けるだけでバランスを取り、立ち上がれるという。

開発したのは同大発ベンチャーの「Qolo(コロ)」。社長を務める江口洋丞さん(39)は同大工学システム学類に在籍していた頃から起立支援のモビリティ研究に取り組み、21年に同社を設立した。

学生時代に個人が移動する手段「パーソナルモビリティ」の研究を進めていた頃、祖母が転倒して車いすを利用するようになった。江口さんは「立てないと生活が大変」と考え、起立支援機器の開発に乗り出すことにしたという。

立ち乗り車いすは、脊椎の損傷や脳卒中、脳性まひなどで下肢運動機能に障害のある人が対象。結婚式などに立って参列したり、買い物で高い棚にある商品が自分で取れたりするなど、江口社長は「就労や日常面で車いす使用者の選択肢が増える」と利点を語った。

現在は同大付属病院の協力を得て入院患者などに利用してもらい、細かい改良を重ねる。中でも、起立時に体重をかけることになる持ち手部分については、利用者に必要以上の負荷がかからないよう調整が必要という。

同大医学医療系の門根秀樹准教授(情報理工学)も開発に携わる1人。当初は健常者の立位で車いすを設計していたが、「脊椎損傷の人は腹筋が弱く、足だけでなく腹筋も支えないといけないことに気付き、試行錯誤を繰り返した」と語った。

車いす利用者の課題や需要について聞き取りも進め、25年には企業などに貸し出し、使用者の声を基にさらに改良を図りたい考え。このほか、リハビリ時の起立訓練機器の開発も進行中という。



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