素朴な低山 魅力知って 「心地よさ」を求め10年 ハイキング団体「IBaR」 茨城
茨城県内の花瓶山(はなかめやま)(大子町)に小舟富士(こぶねふじ)(常陸大宮市)、湯沢峡(大子町)-。市民グループ「IBaR(いばーる)」は10代から70代までの約40人がメンバーで、知る人ぞ知る県内の低山でハイキングを楽しむ。活動は100回を重ね、今秋で結成10年。主宰する同県水戸市出身で玩具デザイナーのねもといさむさんは「茨城の山の渋くて素朴な魅力を知ってほしい」と呼びかけている。
「大きな白い犬かと思ったんです」。ねもとさんが同県大子町と栃木県大田原市にまたがる花瓶山(標高690メートル)の中腹で2022年5月に撮ったという写真を興奮気味に示す。つぶらな瞳でこちらを見つめる獣が写り「野生動物に詳しいメンバーが『カモシカじゃないか』って。茨城にいないと聞いていたから幸せな気持ちになりました」。
IBaRは「高さより心地よさ」をモットーに月1回程度活動。県内の低山を主なフィールドに、ハイキングや鳥の営巣観察、ジャム作りといった山遊びを満喫している。
「道のりも楽しむのがハイキングで、動植物との偶然の出合いが面白い」。ねもとさんは強調する。団体名は「茨城の山歩き」を縮めた「いばある」に、イタリア語で酒場を意味する「バール」を重ねた。
ねもとさんは愛知県の芸術大を経て、東京都内で玩具デザイナーとして独立。子どもの造形教室と二足のわらじで忙しさを極める中、奥多摩や秩父の山歩きが息抜きだった。創作の歩みをまとめようと12年に水戸にUターンしたものの、「浦島太郎状態」だった。居場所を求め、交流サイトでハイキング仲間を募り、5人で生瀬富士(大子町、標高406メートル)に登った。これ以降、同志がじわじわと集まった。
それまでに郷里の山に登った経験は筑波山の遠足ぐらいだった。低山愛好家のブログを手引きに県内の山を歩き、「茨城の山にこんな絶景があったのか」と心が震えたという。メンバーの多くも県内在住ながら「手が入らない山の魅力を味わえた」「茨城の里山にこれほど澄んだ清流があるなんて」と、身近な低山の味わい深さに驚く声が上がる。
ただ、県内の山は隣県近県の名峰と比べて知名度が低く、「富士山」に挑む前座の練習台的な扱いを受けがちだと、ねもとさんは残念がる。「例えば奥久慈山頂からの眺めは南北に絶壁が連なって別世界みたいだが、人が少なく静かで、手が入りすぎない素朴さも魅力。そんな低山が茨城にはたくさん眠っている」と力説する。
「すぐそこにある自然の不思議や楽しさを広めたい」。今後も地元で「低山愛」の輪を広げていく考えだ。
IBaRのホームページhttps://www.ibar.jp/