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《リポート2024》「甲虫の宝庫」呼び水に 森林豊かな茨城・城里 キャンプ場好評、専門店も

ふれあいの里のクヌギ林で捕れたミヤマクワガタ=城里町上入野
ふれあいの里のクヌギ林で捕れたミヤマクワガタ=城里町上入野


町域の約6割を森林が占め、豊かな自然を擁する茨城県城里町は、カブトムシやクワガタムシが生息するクヌギ、ナラの雑木林が豊富で、キャンプなど夏のアウトドアレジャーで訪れる家族連れらに、「昆虫採集」のアクティビティーを提供できる。昨年には地元の虫好きが起業した専門店もオープン。「甲虫(こうちゅう)の里・城里」としての注目度が高まっている。

▽「いっぱいいる」

町開発公社が運営する「総合野外活動センターふれあいの里」(上入野)。キャビンやオートキャンプ場などの施設が充実した同町きってのレジャーの拠点だ。オープンから42年目になる施設の敷地内には、クヌギの高木などが林立。この3連休中の14日には、虫を入れる容器を手に、木の周りを巡る宿泊客の親子や子供たちの姿も見られた。

「カブトムシやクワガタムシ、いっぱいいますよ」。同公社事務局長の住谷亮さん(48)の後に付いて、何本かの木を巡ると、ほんの数分の間にミヤマクワガタのオスが1匹、捕れた。住谷さんは、樹液の出方を見ながら「まだ少し(時期が)早いかな。これから、どんどん出ますよ」と教えてくれた。

▽産地表示

町役場にも近い、町中心部の石塚地区に、昨年夏にオープンした「常北ファーム」。カブトムシ、クワガタムシの専門店で、外国産を含め、20種類もの生体を扱う。飼育用品も充実し、ネット検索で探し当て、栃木など県外から訪れる客も少なくない。

プレハブの6畳ほどの広さの店舗。中に入ると、冷房が20度に設定され、ひんやりとする。ヘラクレスオオカブトやオオクワガタなど1万数千円~数千円の生体のほか、「城里」と産地表示されたミヤマクワガタやノコギリクワガタなども販売されている。

店主の飯村貴洋さん(30)は同町生まれ、在住。本業は私立高校の英語教員で、店は副業。無類の甲虫好きで「小学生の頃は、夏になると毎日早起きして捕りに行ってましたね」。大人になってから繁殖も手がけ、店で扱う生体のうち、半数の種類は自前で育てたものという。

▽CFは失敗

町内の道の駅かつら(御前山)と物産センター山桜(小勝)でも、地物のカブトムシやクワガタが販売されている。「かつら」に卸している男性(64)は、「おいが山に行って捕ってくる。目印の木や場所があるようだ」という。

飯村さんは、2021年と22年にクラウドファンディング(CF)での資金調達を試みたが、うまくいかなかった。「雑木林を購入し、カブトムシやクワガタが生息する環境をつくり、採集もできるようにしたい。そのための資金をと考えたのだが、寄付がほとんど集まらなかった」

一方、ふれあいの里の住谷さんは、「甲虫の宝庫」が誘客の呼び水になっていると喜ぶ一方、カブトムシの幼虫がイノシシに食べられてしまう被害が起きていると頭を悩ませてもいる。かつらに卸している男性は「捕れることは捕れるが、数は以前より少なくなっている」、飯村さんは「太陽光パネルの設置などで山林伐採が増え、雑木林が減っている。そのことも管理雑木林をつくろうと思った理由」という。

天然自然の恵みが、町の魅力を高め、活性化にもつながる。そんな期待を抱かせる一方で、その「資産」が、持続できるのかどうか。関係者に不安がよぎっていることも確かのようだ。



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