常陽再稼働の必要性了承 茨城県原子力審議会 大洗町、工事了解へ
日本原子力研究開発機構(原子力機構)の高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町)の再稼働を巡り、県原子力審議会は2日、文部科学省が説明した再稼働の必要性や意義を了承した。これを受け、常陽が立地する大洗町の国井豊町長は再稼働に必要な安全対策工事の着工に「事前了解する方向」と認める考えを明らかにした。
審議会は、県が「事前了解」を判断する一環として、同県水戸市内で開かれた。原子力関係市町村の首長や県議、有識者ら委員13人と文部科学省、機構の関係者が出席した。
文科省の担当者は、核燃料サイクルの推進が国の基本方針とした上で、高速炉について「再処理で高レベル放射性廃棄物を減らし、資源を有効利用することができる」と強調。常陽の再稼働により、「実証炉開発に向けた研究の推進や、放射線を使ったがん治療薬の製造などにつなげる」と説明した。
常陽は昨年7月、原子力規制委員会の新規制基準の適合審査に合格。原子力機構は2026年半ばの再稼働を目指している。一方、原子力安全協定に基づき、安全対策工事の開始には県と大洗町の事前了解が条件となっている。
会合で国井町長は、住民向けの安全対策に関する資料の提示を機構に要望した。会合後、茨城新聞の取材に対し、「地元の安全を見極めた上で、(安全対策工事を)了承する」と述べた。
県は今後、同町に隣接する鉾田、水戸、ひたちなか、茨城4市町から意見を聴取する方針。その上で大井川和彦知事が最終的に判断する。
常陽は国内唯一の高速炉で発電設備はない。廃炉になった高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の前段階に位置付けられる研究施設で、1977年に運転を開始した。実験装置のトラブルで2007年から運転を停止している。