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薬物脱却し恩赦 茨城ダルク出身、渡慶次さん 依存者支援の活動評価

恩赦を受けたことを報告する渡慶次稔さん(右)と茨城ダルクの岩井喜代仁代表=結城市中央町
恩赦を受けたことを報告する渡慶次稔さん(右)と茨城ダルクの岩井喜代仁代表=結城市中央町


薬物依存症の民間リハビリ施設「茨城ダルク」(茨城県結城市上山川)出身の男性が、過去の実刑判決で失った国家試験の受験資格を再び得る「恩赦」を受けた。水戸保護観察所によると、再犯率が高い薬物事犯者への恩赦は珍しい。男性は自身の体験を伝えながら、薬物依存者の社会復帰に向けた活動を続けるつもりだ。

恩赦を受けたのは沖縄県出身の渡慶次(とけし)稔さん(46)。覚醒剤を多用し、暴力団で傷害事件を起こした過去と向き合い、茨城ダルクで7年間リハビリを続けた。

薬物に手を染めたのは中学生の頃。先輩に誘われるままシンナーを吸い始めた。20歳で暴力団組員となり、傷害罪で服役中の26歳の時、刑務所内で薬物の売人と出会い、「そんなにいいものか」と出所後に覚醒剤を使い始めた。

その後は薬物中心の生活になり組織も抜けた。「やめたくてもやめられない状態」となり、血管が硬直して注射針が刺さらなくなっても、体に針を当てた。覚醒剤取締法違反罪で懲役1年2カ月の実刑判決を受け、36歳で再び服役した。

仮出所後に茨城ダルクの岩井喜代仁代表から誘われてダルクへ入寮すると、水戸保護観察所の薬物再乱用防止プログラムにも参加。乱暴だった言葉遣いはいつしか消えていった。

薬物依存症者が過去の体験を話すミーティングでは司会を務め、自身の過去を率直に語った。薬物依存からの回復を目指す人々に寄り添ううちに「こんな自分でも役に立てる」と自信にもつながった。

同観察所が申請した「個別恩赦」で、国家試験が受けられる「復権」が認められたのは今年2月。小出有二所長は「薬物依存は脱却が困難で、恩赦も難しい。今回の恩赦は依存症者に勇気を与えるはず」と力を込める。

現在は山口ダルク(山口県)の施設長を務める渡慶次さんは「自分は役に立たないと思っている依存症者が、社会の役に立てる仕組みを作りたい」と新たな夢を語る。薬物依存の過去があるからこそ果たせる役割として、今後も社会貢献活動を続けるつもりだ。

★恩赦
刑罰を軽くしたり、裁判の効力を変更したりして、罪を犯した人の社会復帰を促す制度。政令で要件を定めて一律に行う「政令恩赦」と、申請に基づき個々に審査する「個別恩赦」がある。効力は、大赦や減刑、復権など5種類。個別恩赦は、有識者らによる「中央更生保護審査会」で審査する。法務省の保護統計によると、昨年は12人が恩赦相当と認められた。



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