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M&A名目、被害続発 都内の投資会社 買収後、消息絶つ 茨城県内3社も

ルシアンHD社長から同社役員に出された振り込み指示のLINE画面(画像の一部を加工しています)
ルシアンHD社長から同社役員に出された振り込み指示のLINE画面(画像の一部を加工しています)


中小企業の事業承継(M&A)で、茨城県内の事業者3社を含む少なくとも全国37社が、経営不振や破産に追い込まれていたことが3日、関係者への取材で分かった。事業者はいずれも東京都内の投資会社が買収。投資会社が資金を吸い上げた後、事業経営を放置して音信不通となるケースもあった。トラブルとなった37社のうち20社は「被害者の会」を設立した。

事業者とトラブルになっているのは、不動産など多角経営に取り組むとされる投資会社「ルシアンホールディングス(HD)」。トラブルになっている各社によると、ルシアンHDは雇用継続や売り上げ拡大などを申し出て、事業承継を望む事業者と経営権の譲渡に関する契約を締結。しかし、連帯保証人の名義を変更せず、ほとんど経営に関与しないまま連絡が取れなくなったという。

このうち、納豆メーカー「金砂郷食品」(茨城県常陸太田市)は2023年3月、M&A仲介会社の紹介で、ルシアンHDが関わる同県日立市の合弁会社と株式譲渡契約を締結。その後、ルシアンHD側に金砂郷食品の預金約3500万円が抜き取られ、同社ではその後、従業員の給与遅配などが繰り返された。

同社社長を務めていた永田由紀夫さん(61)は同年9月、株式を買い戻して社長に復帰。自身の預金や生命保険を解約するなどして会社の運転資金に充てた。取引先などの協力で1年後には財務状況を回復させたが、ルシアンHDの社長とは今も連絡が取れない状況だ。

永田社長は「自分の判断の甘さで従業員に苦しい思いをさせ申し訳ない」と語った。ルシアンHDに対しては、契約書で交わした従業員の雇用保護や連帯保証人の変更、業績向上は「何一つ守られなかった」と憤った。

ルシアンHD役員の男性(30)は茨城新聞の取材に、買収した事業者の預金をルシアンHD社長と別の役員が経営する会社口座などへ送金していたと認めた。役員は「(買収企業の)改善計画を作成しても、社長や他の役員に見向きもされなかった」とも語り、自身は命じられて買収先企業の連帯保証人になり多額の負債を負わされたとしている。

ルシアンHDとトラブルになった事業者20社で設立した「被害者の会」代表の荒川公一さん(62)=富山県富山市=によると、事業者の中には連帯保証人が変更されず倒産したり、経営権譲渡により会社を解散できなかったりするケースがあったという。同会はトラブルの状況を取りまとめ、警察に相談している。

茨城新聞はメールでルシアンHD社長に取材を申し込んだが、3日までに回答がなかった。

■巧妙な手口 M&A総合法律事務所(東京都港区)の土屋勝裕弁護士の話

売り急ぐ事業者につけ込んだ巧妙な手口。ただ、一般的に100%子会社の財産を親会社に移したり、子会社を廃業したりするのは親会社の判断。連帯保証が引き継がれないのは信用力不足で銀行から断られたということも考えられる。今後、事業者がルシアンHD社長らを相手取り民事訴訟で勝訴したとしても、口座にお金がなければ取り返せないだろう。



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