野外上映、見納め 7日最終 主催者「役割終えた」 常総・水海道「宝来館」跡地 茨城
茨城県水海道市(現常総市)の中心市街地にあった映画館「宝来館」跡地で開かれていた年に1回の野外上映会「懐かシネマ」が、今年限りで終了することになった。まちのにぎわい創出や2015年の常総水害の被災者を勇気づけようと開かれ、毎年盛況だったが、主催者は「一定の役割を果たした」と判断。7日の公演を最後に幕を閉じる。
宝来館は1946年に開業し、水海道の市街地でシンボル的存在だった。映画が数少ない娯楽だった時代、多くの家族連れや恋人たちでにぎわっていたが、73年に惜しまれながら閉館し、その後、建物も取り壊された。
懐かシネマは、専門学校やテーマパークなどを展開するサンスイグループ代表の東郷治久さん(76)、宝来館で看板絵師を務めていた井桁豊さん(89)、同館跡地前にある婦人服店を営む羽富都史彰さん(64)の3人が中心となって運営。当初は「宝来館を覚えている人たちにタイムスリップしてほしい」という思いから始めたが、水害が起きた2年目からは、被災者支援の思いも込めて実施してきた。
これまでコロナ禍の2020年を除き9回開催。会場には毎年多くの観客が訪れ、宝来館の思い出に浸りながら映画を鑑賞。「懐かしさのあまり、泣きながら映画を見ている人もいたほど」(羽富さん)の人気を集めていた。
10回目の節目を迎える今年に終了を決めた理由について、東郷さんは「宝来館を知る人が少なくなってきた。役目を終えたと思う」と語り、井桁さんは「自分は水海道生まれ宝来館育ち。看板を描けて懐かしかった」と10年間の活動を振り返った。
最後の上映となる作品は、1977年公開で高倉健主演の名作「幸福の黄色いハンカチ」。羽富さんは「今年で最後となる懐かシネマ。楽しんで見てもらえればうれしい」と話した。
当日は午後4時半開場、同6時半上映開始。入場無料。小雨決行。問い合わせはロコレディ水海道事務所(電)0297(22)1377。