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高速実験炉「常陽」再稼働へ 茨城県、工事を「事前了解」

公開された高速実験炉「常陽」の原子炉上部=大洗町成田町(2023年6月22日)
公開された高速実験炉「常陽」の原子炉上部=大洗町成田町(2023年6月22日)


日本原子力研究開発機構(原子力機構)の高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町)の再稼働に必要な安全対策工事を巡り、事前了解権を持つ県は5日、着工を認める方針を固めた。大洗町と歩調を合わせる形で6日、原子力機構に事前了解書を交付する。事実上、再稼働の容認となる。原子力機構は原子力規制委員会から工事計画が認可され次第、本格的に工事を始め、2026年度半ばの再稼働を目指す。

着工は原子力安全協定に基づき、県と大洗町からそれぞれ「事前了解」を得ることが条件となっている。町はすでに事前了解の意向を示しており、残る県の判断が注目されていた。

茨城新聞の取材に対し、県の担当者は「専門家の検証により、安全対策に適切な検討がされていると判断した」と強調。再稼働の意義や必要性に対する関係自治体の首長や県議らの異論もないことから「事前了解を決めた」と話した。

大洗町は5日、非公開の町議会全員協議会で事前了解の方針を伝達。町によると、原子力機構の吉武庸光大洗研究所長らが安全対策について説明し、町議からは特段の異論はなかった。これを受け、町は6日の事前了解書の交付を決めた。

国井豊町長は「新規制基準に基づいた安全対策にきちんと対応していると原子力機構を信頼する」と述べ、再稼働後は安全性確保に向けて「(随時)事業者との意見交換や情報開示を求めていく」とした。

吉武所長は「事前了解に感謝している。エネルギーの安全保障は国の重要課題。しっかり運転再開させ、高速実証炉の研究開発に寄与していく」とした。その上で「安全確保が事業の大前提。地元住民の安全安心、信頼が重要だと考えている」と述べた。

事前了解について、県はこれまで、原子力専門家らで構成する「県原子力安全対策委員会」と関係自治体の首長や県議、有識者でつくる「県原子力審議会」の2組織で審査。隣接4市町の意見聴取を経て判断するとしていた。

対策委と審議会は8月までに、安全対策の検証や再稼働の必要性などをそれぞれ了承。大井川和彦知事は隣接4市町から「計画に対する異論はなかった」とした上で、事前了解を「近々判断する」としていた。

常陽は国内ただ一つの高速炉で発電設備はない。廃炉になった高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の前段階に位置付けられる研究施設。最大熱出力は10万キロワット。核燃料サイクルの実現に向け1977年に運転を開始、トラブルのため2007年から停止している。



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