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《台風13号 茨城県北大雨 1年》(中) 防災拠点 再考急ぐ 情報共有、連携を深める

台風接近に備え、地域福祉交流センターの正面玄関に土のうを用意する金沢節さん=北茨城市磯原町本町、鈴木葵撮影
台風接近に備え、地域福祉交流センターの正面玄関に土のうを用意する金沢節さん=北茨城市磯原町本町、鈴木葵撮影


台風10号の接近が予想された8月末。茨城県北茨城市の市社会福祉協議会が入る同市磯原町本町の地域福祉交流センターで、正面玄関のすぐ横に土のうが積み上げられた。

「雨が降ると分かったらすぐに扉の隙間を埋め、浸水を防げるように」。1階に事務所を構える市社協の金沢節事務局長(62)は「その時」に備える。

昨年9月の台風13号に伴う大雨で周辺道路が冠水し、建物内に水が流れ込んだ。床下の配線が漏電し、空調設備がある半地下も約1メートル浸水した。

市防災計画は、交流センターに災害ボランティアセンター(ボラセン)を開設すると定めている。運営を担うのは社協。だが浸水の影響で、ボラセンは約1.5キロ離れた市役所多目的棟への設置を余儀なくされた。

当時、社協は事務所の復旧とボラセンの立ち上げ、休止できない最低限の福祉業務を並行して行い、人繰りに苦労した。市内の建物被害は700棟以上。金沢さんは「規模を考えると、この場所では対応が難しかったと思う」と振り返る。


水害を機に市は、ボラセンが置かれる交流センターを、市役所近くの高台に移転新築することを決めた。老朽化も背景にある。本年度は設計を進める。大北川や花園川、津波の浸水想定区域内にあったため、移転先の検討に当たっては「安全に活動できる場所を最も重視した」(市担当者)。

昨秋の大雨でボラセンは22日間開設。活動件数206件、延べ1330人のボランティアを受け入れた。市役所との近さが円滑な情報共有につながり、被災者の相談にワンストップで対応できる利点もあった。

「ボランティアは被災者の心を支え、復旧を加速させる存在。ハード面だけでなく、昨年の経験を基に支援側もスキルアップしたい」。金沢さんは移転により、災害時の連携がさらに深まることを期待する。


大雨で市役所が浸水した同県日立市も、防災拠点の再考を迫られている。

当時、庁舎脇を流れる河川が氾濫し、地下1階の電源設備が水没して停電や断水が続いた。市は今年2月から専門家を交えた検討会を重ね、今月、安全対策計画をまとめた。

水没した電源設備を現在地のまま復旧させることに市民から疑問の声が寄せられたが、市は「免震構造の強靱(きょうじん)な地震対策機能を残しつつ、多重防御の浸水対策を行うことで両方のリスクに備えられる」と主張する。

電源の復旧や止水壁の新設、河川改修…。応急復旧などと合わせた事業費は最終的に「30億円台半ば」(市担当者)となる見通し。

市の災害対策本部が本庁舎近くの消防本部へ移転を迫られたのは、建て替え前の旧庁舎が被災した東日本大震災に続き今回で2度目だった。

二つの災害を経験し、小川春樹市長は言う。「あらゆる災害に強い、市民の安全安心のよりどころとなる庁舎にしていかないといけない」



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