お墓 多様な選択肢 茨城県内寺院や葬祭業者対応 樹木葬や海洋散骨 未婚、少子化で考え方変化
茨城県内で墓の選択肢が広がりつつある。樹木葬や海洋散骨など自然葬がじわり注目されている。未婚化や少子化に伴い、墓石を建てて埋葬する従来の墓にこだわらず、宗派不問や継承者不要といった墓地に対する考え方の変化が背景にある。寺院や葬祭業者が新たなニーズに応える動きが出てきた。
▽低価格に需要
同県那珂市の正覚寺は今春、樹木葬の受け入れを始めた。住職の関口明司さん(52)は「安くお墓を持てないかという要望が以前からあった」と理由を語る。
従来型の墓は平均で100万~200万円かかる。正覚寺の樹木葬は一つの区画内に埋葬する形を取る。1体10万円からとし、4体分の骨つぼが入るもので90万円と幅広い価格設定にした。宗派は問わない。
整備した220区画のうち、生前予約を含む1割が契約済みだ。「子どもに負担をかけたくない」と夫婦だけで墓に入ることを望む利用者もおり、きっかけはさまざまだという。
▽FC契約
県北地域で葬儀事業を手がける同県日立市のいばそう企画は、全国展開する東京の企業とフランチャイズ(FC)契約を結び、海に遺骨をまく海洋散骨のサービスに乗り出した。
那珂川河口から沖合に出て散骨する。船1隻(定員8人)を貸し切るプランのほか、合同や代行での散骨も用意した。料金は内容によって価格は5万5000~38万5000円(平日)。
同社の林三弘社長は「どこからでも故人に手を合わせることができる」と利点を挙げた。
▽少数派
定額払い(サブスクリプション)で墓を利用するサービスも登場した。日立市の蓮光寺は、東京の企業と提携して昨年6月からサービスを展開。月3980円でロッカーのような集合型の墓に遺骨を預けられる。引っ越しなどで提携する別の寺院に移動もできる。
まだ利用者はいないが、30~40代を中心に問い合わせがあるという。副住職の岡田祥導さん(40)は「金銭的理由などでお墓を持てない人の選択肢を広げたい」と話す。遠方の利用者を想定し、「毎月一定の金額を払うことで、先祖を思い出すきっかけになるのではないか」と需要を見越す。
全日本墓園協会の横田睦主幹研究員(59)は、従来の墓と比べると自然葬などは少数派だと指摘。その上で「新たな形式の墓を望む場合、当人と自分を見送ってくれる人があらかじめ相談して決めることが必要」と強調した。