初心忘れず精進を 大の里らの胃袋支え 土浦・中華料理店の卜部さん 茨城
大ちゃん、がんばれ-。二所ノ関部屋に入門して間もない頃から大の里関を見守る女性がいる。茨城県土浦市摩利山新田にある中華料理店「福禄寿」の女将(おかみ)、卜部照江さん(73)。二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)と弟子たちがたびたび店を訪れては、和気あいあいと料理を平らげる姿に接してきた。
卜部さんと部屋との付き合いは、二所ノ関親方の父、萩原貞彦さんから始まる。萩原さんはゴルフ仲間だった縁があり、ラウンド後の打ち上げに卜部さんの店を利用していた。その後、二所ノ関親方も同店を利用するようになったという。
大の里関が弟子入りして間もない2023年4月、二所ノ関親方からかかってきた来店予約の電話で「今度、強いのが入った」と告げられた。大の里関が初めて店に現れたのは、同19日のこと。入門したての丸刈り頭の若者を見やり、二所ノ関親方は「この子は強くなるよ」と紹介したという。
食事を済ませると、大の里関は「おいしかったです。また来ます」と、はっきりした声であいさつした。初対面から礼儀正しい振る舞いが印象に残った。土俵に上がり、タオルで汗を拭うと必ず四つ折りにして返す大の里関の姿にも「優しくて礼儀正しいのがしぐさから伝わってくる」と、卜部さんは目を細める。
2年連続でアマチュア横綱に輝き、鳴り物入りで角界入りした大器は、初土俵からわずか1年で初優勝を果たした。場所後には石川県から大の里関の叔父、叔母ら後援会関係者約30人が食事に訪れるなど、想像もしなかった縁の広がりが生まれた。
初優勝後の6月、大の里関が力士ら約20人を伴って店を訪れた。「まげを結ってからは顔が引き締まって、一層落ち着いた」と卜部さん。大の里関の成長を感じ取っている。
秋場所の取組は店内のテレビ中継で見守った。14日目、大の里関は苦手としてきた相手を勢いよく押し出して破り、2場所ぶり2度目の優勝をつかんだ。卜部さんは「これからの部屋を背負っていくのだから、どれだけ強くなっても初心を忘れず精進してほしい」と期待を寄せた。