「誰かの勇気や希望に」 心の病、音楽で再起 茨城・水戸出身の伊王野さん 米で10月ジャズ公演
茨城県水戸市出身のジャズシンガー、伊王野求美さん(32)が、日本のジャズ発祥地とされる兵庫県神戸市で5月に開かれたコンテストに初出場でグランプリに輝き、10月10日から渡米してジャズ本場であるシアトルで歌声を響かせる。かつて心の病を抱え入院、通院を続ける中で音楽に救われたことで昨年1月から歌いだしたところ、数々のコンテストで受賞して活躍の場を見いだした。「苦しい経験もしたが、希望はあると感じる。私も誰かの勇気や希望になれれば」と話している。
伊王野さんは水戸の梅大使や、茨城空港応援大使などの観光大使をはじめ、声優養成所卒業、アニメ制作会社でのアニメーター経験など多種多様な経歴を持つ。アニメーターの時期は激務で体調を崩し、都内の病院に通院。帰郷してからも入院、通院を繰り返した。
一方で、4歳から20年以上クラシックピアノを弾いてきた経験があったことから、2021年から入院先を通じて大子町の飲食店経営で電子オルガン奏者の女性と出会って歌唱指導を受けた。リハビリも兼ねてピアノ弾き語りの院内コンサートを開いたところ、患者らに好評を得たことで音楽の道に目覚めた。
「あれもできない、これもできないと思う中、『できる』と思い出させてくれたのが音楽だった」と振り返る。院内コンサートの開催は10回を重ねた。
父がテナーサックス奏者だったことから昨年1月からジャズシンガーとして活動を始め、県内では大洗町港中央のレストラン「トラットリアJマリーナ」で定期公演しながら、ジャズコンテストに挑戦。群馬県桐生市でのオーディションでグランプリとオーディエンス賞の2賞を受け、東京・新宿でのオーディションでも入賞した。
今年5月は全国の女性ボーカリストの登竜門とされる「第23回神戸新開地ジャズボーカルクィーンコンテスト」で予選を通過して本戦に出場。グランプリを受賞し、副賞として神戸市の姉妹都市でもあるシアトルでの出演権を得た。現地のジャズホールやミドルスクールなど3カ所で公演する。帰国後も栃木県小山市や桐生市など県内外で出演を予定し、来年も神戸新開地のコンテストではクイーンとして舞台に上がる。
伊王野さんは「自分の歌を良いと言ってくれる人を一人ずつ、大事にしていきたい」と意欲に満ちている。