地方再生、茨城県内から期待 自民新総裁に石破氏 子育て支援や経済対策 手腕に注目
派閥裏金問題で政治不信が指摘される中、自民党がリーダーに求めたのは「安定」だった。27日の総裁選に勝利した石破茂元幹事長は、地方に目配りする姿勢を貫き、幅広い支持を得た。新首相として次期衆院選で党の「顔」になる石破氏には、県内各地から期待や注文の声が上がった。
「経験豊富で安定感がある」と、ベテラン政治家としての力量やこれまでの政治姿勢を高く評価する声が聞かれた。人口減少・少子化対策をはじめ、外交・安全保障、経済対策など国政の課題解決を求める声が相次いだ。
「石破氏を応援していた。好感を持てたし努力している」。茨城町、無職、安島せつ子さん(80)は大きな期待を寄せつつ「まずは政治とカネの問題を整理し、物価上昇、少子化対策に力を入れて。一番大変な時期に総裁になった。安心して過ごせる世の中にしてほしい」と望んだ。
急速に進む少子化の中で、子育て支援へのてこ入れを求める声は強い。坂東市の会社員、武田梨沙さん(36)は「出産と職場復帰を経験したが、やっぱり働きにくい。今の働き方やお金のかかり方だと、2人目(の出産)は考えてしまう。もっと働きやすい制度や環境になることを期待したい」と強調した。
大学に進学した上で助産師を目指すという守谷市、高校3年、鈴木日菜さん(17)は「出産前に支援が必要な特定妊婦を守ることにも力を入れて。妊婦さんが孤立せず、子どもを産みやすい環境づくりを」と望んだ。
石破氏の経験豊富な外交・安全保障面での手腕に注目する人も多い。常陸大宮市、建設業、鈴木仁さん(61)は「対中国、対米国などの今後の政策は直接日本の経済に響いてくる。しっかりやってほしい」。元自衛官の笠間市、行政書士、岡野安次さん(86)は「経験豊富で安定感がある人が選ばれた」と評価。「55歳定年を延ばすなど、自衛隊員の処遇改善を図って」と期待した。
適切な経済対策を求める声も相次いだ。「国民一人一人が成長を実感できるような経済政策を。飲食に関わる者として、特に物価の高騰は何とかして」と鉾田市、調理師、小沼雅典さん(44)。鹿嶋市の公務員、田山幸恵さん(38)は「日本の所得はこの数十年でほとんど変わらす、貧しくなった。勤勉な人が正当に評価される経済対策を」と求めた。
龍ケ崎市、会社員、酒井拓也さん(24)は「給料の手取りは変わらないのに、税金は増えていくばかり。働く若者にもっと補助を」と望んだ。
常陸大宮市、カフェ経営、江原真弓さん(65)は、固定資産税などを巡る空き家対策の不十分さを指摘。「地方は人口減で、人の住まなくなる家が増え続けている。対策が急務だ」と訴えた。
■県連「総選挙戦える」
新総裁に選出された石破茂氏は、茨城県内党員票の約4割を集めた。これまで何度も茨城県入りし県民の声に耳を傾けてきた姿勢が、高い支持につながった。県連には「地方人気が高く、政策を訴える言葉も分かりやすい」と、迫る次期衆院選への期待感も広がる。
この日、県連幹部らは水戸市内のホテルで党員票の開票作業状況を確認後、同市の県連事務所で決選投票を見守った。石破氏の総裁選出が決まると、海野透会長は「(有権者の人気があり)総選挙で戦いやすいとの思いから(決選投票で)議員票が伸びたのだろう」と分析した。
地方人気の高さから、迫る総選挙に対する期待も広がる。白田信夫幹事長は「しっかり地方に目を向けてくれている。得票は期待の表れ」と述べた。
5度目の挑戦で総裁の座を射止めた石破氏は、2012年9月の総裁選で梶山弘志幹事長代行が選対事務局長を務めて以降、茨城県とは関わりが深い。国政選挙にとどまらず、18年の県議選や19年の八千代町長選など、「応援演説のため何度も県内各地を訪れてきた」(県連幹部)。
12日の告示日以降、茨城県入りした候補者は唯一、石破氏のみだった。総裁選終盤が迫った21日、水戸市や笠間市などでの街頭演説に加え、農業や研究施設など県内の現地視察を終日こなし、安全保障や経済政策などを訴えて回っていた。