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交通事故、痕跡で見抜け 若手捜査員に技術継承 茨城県警

衝突実験で路面に残った車のブレーキ痕や衝突した場所を確認する警察官ら=牛久市猪子町
衝突実験で路面に残った車のブレーキ痕や衝突した場所を確認する警察官ら=牛久市猪子町


茨城県警は、交通事故が発生した際に目撃者から話を聞いたり、車両や現場の状況を調べたりする「交通事故捜査員」の育成に力を入れている。専門家の協力の下、実車を用いた衝突実験や講習を実施。昨年から専門性の高い鑑識技術の集中研修も行う。近年はドライブレコーダーなど機器の発達で捜査の方法が変化する中、現場の痕跡を緻密に分析する目を養う。県警は、若手を中心に、より正確に事実を導ける捜査員を増やしたい考えだ。

交通事故捜査員は、交通事故現場に残された車両や散乱物を調べ、実況見分を行い、目撃者らから話を聞くなどして事故原因を調べる。主に各警察署の交通課事故捜査係に所属する。

科学的な技術も必要で、ブレーキ痕から車両の速度や衝突位置を計算したり、フロントガラスの状態から衝突速度を推定したりする捜査を実践している。

県警はより精度の高い捜査を実現するため、研修を繰り返す。若手向けの基本技術を伝授するほか、昨年からは交通鑑識を目指す現場経験者向けに5日間の専門研修にも取り組む。ベテラン捜査員の引退で世代交代が進む中、技術の継承を重視する。

講師として、自動車やタイヤ工学が専門で数々の交通事故解析を行ってきた知能自動車研究所(同県つくばみらい市)の山崎俊一社長(74)=工学博士=が協力。実車を用いた衝突実験などを行い、より事故現場に近い状況を再現する。

同県牛久市内で9月に行われた研修には、新人の交通事故捜査員19人が参加。自転車が時速40キロの車にはねられる衝突実験では、ダミー人形がはね飛ばされ、捜査員は「目撃者」として息をのむように現場を確認した。山崎さんから、地面に伏せて目線を下げ、ブレーキ痕を観察するなど、証拠を見落とさずより正確に事故を再現する技術を学んだ。

県警行方署の古谷由香里巡査長(26)は「(実験で)事故を目の当たりにすることで、現場に残されたものから想像しやすくなる。立会人の言葉だけでなく、痕跡も重要視したい」と話した。山崎さんは「痕跡を見ただけで事故を想像できるような警察官が一人でも増えればいい」と期待を込めた。

県内で8月末までに発生した交通事故は約3900件で、1日平均約16件。死者62人、負傷者約4800人に及ぶ。県警交通指導課の方波見景子理事官(47)は「事故捜査は人の命だけでなく、民事的訴訟にも関わる。正確な答えを導けるよう、緻密な捜査をできる人材を増やしていく」と強調した。



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