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悩み共有 支援充実へ 高次脳機能障害 茨城県内家族会20周年 専門機関や拠点病院実現

県央地区の交流室で話し合う家族会員=9月13日、水戸市内
県央地区の交流室で話し合う家族会員=9月13日、水戸市内


脳の病気や交通事故による後遺症で記憶や行動に支障が出る高次脳機能障害の茨城県内家族会「高次脳機能障害友の会・いばらき」が、今年で設立20年を迎えた。発足当初はあまり知られていなかった高次脳機能障害について、家族の悩みを共有する場として大きな役割を果たしてきた。支援体制の充実を求めて県への要望活動を続け、専門機関の新設など実現に至ったものもある。患者や家族が地域で安心して生活を送れる社会を目指し、今後も地道な活動を継続する。

■全国に32万人

高次脳機能障害は脳卒中や交通事故で脳を損傷したことを原因とする後遺症。新しいことを覚えられない▽集中力が続かない▽怒りっぽくなる-などの症状があり、日常生活に支障を来しやすい。後遺症の種類や重さは人それぞれで、外見では患者と分かりにくい人もおり、「見えない障害」ともいわれる。厚生労働省の推計で全国に約32万7千人いるとされる。

2004年、県内の家族や支援関係者などが「脳損傷友の会・いばらき」として家族会を立ち上げた。今でこそ支援体制が整いつつあり、認知度も高まってきたが、設立当時は「ほとんど知られていない」(家族会)状態だった。まずは家族の悩みの共有を目的に始動した。当事者・家族交流や要望、啓発に取り組んできた。

■要望で成果

県に対する要望活動は当初から毎年実施してきた。家族会の主な活動の一つだ。会員が県庁を訪れ、支援体制の充実を求めて要望書を出し、県幹部との意見交換を重ねた。

地道に継続した要望は成果として着実に表れた。専門の支援機関の必要性を訴え、18年には「県高次脳機能障害支援センター」が同県阿見町の県立医療大学の敷地内に新設された。また支援体制の「地域格差」が出ないよう県内全域に拠点病院の設置も求めてきた。本年度は空白地域だった鹿行と県西両地区でも2病院が指定され、県内全5地区に拠点がそろった。

さらに交流室も家族会活動の柱だ。家族の対話や情報交換を目的に13年から県南地区で始まった。本年度からは県央、鹿行地区にも増やし、3地区で各2カ月に1回開催している。

■交流の勧め

9月13日に同県水戸市内であった県央地区交流室には家族2組が訪問し、家族会員と県高次脳機能障害支援センター職員に悩みを打ち明けた。県央地区在住の50代女性は初めて訪れた。20代の息子が小学生の時に交通事故で高次脳機能障害になり、記憶障害が残る。女性は涙を流しながら、これまでの経緯や症状を説明した。これに対し、家族会は当事者だけの交流会への参加を提案。女性は「周りには高次脳機能障害の患者はいないので、家族会からいろんな意見や考えを聞きたかった。息子には当事者交流会を勧めたい」と話した。

家族会は4年前に現在の名称に変更した。本年度から新会長に就いた本田孝男さん(65)=同県守谷市=は「支援体制は着実に整ってきた。今後は本人の特性に合わせた対応が取れる支援の仕組みを考えたい」と今後の活動を見据える。さらに「高次脳機能障害者支援法」の制定を目指し、機運を高める。



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