JX金属 上場申請 東証 脱炭素の競争力強化 茨城県内に生産拠点
非鉄金属大手のJX金属(東京)は8日、東京証券取引所に上場を申請したと発表した。現在は石油元売り最大手ENEOS(エネオス)ホールディングス(HD)の完全子会社だが、経営の独立性を高めて意思決定を迅速化し、半導体や情報通信材料など先端素材分野に力を入れていく。上場が実現した場合、時価総額が数千億円に上る大型上場となる見通し。
水素や合成燃料など次世代エネルギー事業への投資に調達資金を充て、脱炭素分野の競争力を高めるのが狙い。昨年5月から株式上場に向けた準備を始めていた。エネオスHDは50%を超える株を手放し、持ち分法適用会社とする方向。上場時期についてJX金属の担当者は「現時点でははっきり言えないが、できる限り早く上場できるよう進めたい」とコメントした。
同社は、1905年に茨城県日立市で創業した日立鉱山が源流となる。2010年に日鉱金属(現JX金属)を傘下に持つ新日鉱HDと新日本石油が統合し、JXHD(現エネオスHD)が誕生した。半導体回路の形成に使う金属薄膜材料「スパッタリングターゲット」で世界シェア約6割を占める。
日立市や北茨城市など県内6カ所に生産拠点を構えるほか、ひたちなか市新光町に約1500億円規模の投資で「ひたちなか新工場」(仮称)の建設を進めており、26年度の本格稼働を目指す。
同工場の投資計画は、当初計画していた圧延銅箔(どうはく)・高機能銅合金製品への投資を見送り、半導体材料分野を増強する。日立事業所(日立市白銀町)の機能も一部移転する。
今年6月には、日立事業所を含む2拠点で、次世代半導体向け材料の生産能力を増強すると発表。日立事業所では、生産設備増強に加え、生産効率を上げるための技術開発をする設備も導入する予定。25年度上期(4~9月)を目途に生産設備を導入し、稼働を始める。
同社は従来の銅精錬など金属事業を事業基盤とする一方で、半導体材料などの事業を成長戦略の柱に据え、大型の設備投資や技術開発を進めている。