自助会 回復寄り添う 近親者からの性暴力 茨城県内で開設
近親者から性被害を受けた茨城県内在住の女性が、同様の被害を受けた人々が悩みを打ち明けられる県内初の自助会「のぞみとあゆみ」を立ち上げた。近親者による性暴力はタブー視され、相談窓口が把握できる実態は氷山の一角。女性は「自助会の存在を知ってもらい、安心して回復できる居場所にしたい」と話している。
自助会を設立したのは、実兄から性被害を受けていたという60代女性。幼少期から就職後まで被害を受けてきたが、自身が被害者と気付いたのは20年以上後の45歳の頃だったという。女性は「同じ悩みを抱く人が少しでも早く回復できるように」と開設を決意した。
今年1月に活動を始め、現在は10~40代と50代以上を対象にしたオンライン会議を月2回開く。参加者は被害の内容や影響、現在の気持ちを自由に語り合う。「悩みを共感してもらえることが回復につながる」(女性)として、参加者が話した内容については否定も評価もしないのがルールだ。
性被害に関する相談を受け付ける「いばらき被害者支援センター」(同県水戸市)によると、2023年に寄せられた相談1327件のうち、性被害は約6割を占める860件。近親者による被害の相談も増加しているという。
近親者からの性暴力は、他の性暴力に比べ声を上げにくく、同センター担当者は「相談で把握できるのはほんの一部。実態はもっと深刻」と推測する。
設立から約10カ月で、女性は約30人の当事者と出会ったという。悩む被害者に居場所があることを知ってもらおうと、交流サイト(SNS)の「X(旧ツイッター)」での情報発信も続けており、「(自助会が)自分らしく生きられる出発点になればいい」と願っている。
自助会の参加はQRコードから。
■「同じ悩み 支えたい」 活動の女性、自らも被害
「いつもおびえて緊張していた。現実が現実でないような感覚で、自分がされていることが性暴力とは思ってもいなかった」
自助会を立ち上げた女性は1歳上の兄から被害を受け続けた。無邪気な戯れは次第にエスカレートし、年頃になると無理やり服を脱がされて性器の写真を撮られ、性行為も強いられた。女性は「変だな」と感じていたが、「ただ怖いと思うことで精いっぱいだった」と振り返った。
母親から虐待も受け、学校では身だしなみをからかわれた。自身の身の置きどころはなく、被害を打ち明けられなかった。「(被害を)思い出したくなく」、気持ちを封印するように普通の生活を送ったという。
だが、原因不明の苦しさが女性を襲い、頭痛や胃痛は毎日続いた。病気がちになり9回も入院し、身も心もむしばまれた。
自分が自分でないような感覚が続いて20年余りが過ぎたころ、精神科医の講演を聴いて初めて自分が被害者と気付いた。以来、「私の人生って何だったんだろう」との悩みは消えない。
性犯罪を厳しく処罰する改正刑法が施行され、かつては理解されなかったことも認知が進んできたと感じる。「だからこそ、今同じ悩みで苦しむ人を支えたい」。女性はそう語り、一人でも多い被害者の回復を後押ししたい考えだ。