無形遺産勧告 茨城県内酒蔵「喜ばしい」 市場活性化に期待
「伝統的酒造り」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産へ登録されることがほぼ確実になった。これを受け、久慈、那珂など五つの水系を有し、35の酒蔵がある茨城県関係者からは5日、「悲願だった」「日本酒の良さを伝えたい」と喜びの声が上がった。
150年以上にわたり酒造りを続ける同県日立市の「森島酒造」。専務の森嶋正一郎さんは無形文化遺産の登録を歓迎し、「世界に発信する機会を頂けるのは大変喜ばしい。酒造りの視野が広がる」と話した。
平安時代の1141年には酒造りを始めていたと伝わる同県笠間市の「須藤本家」の第55代当主、須藤源右衛門さんも「日本の伝統的な文化の再発見」と声を弾ませ、「本来の酒造りを途絶えさせないためにも、登録をきっかけに酒造りに関心を寄せる人が増えればうれしい」と期待を寄せた。
日本酒を扱う同県ひたちなか市の小売店「お酒の遊園地イシカワ本店」の渡辺豪成さんは、無形文化遺産への登録によって訪日客の注目がさらに集まり、需要増につながると予測。「市場が活性化すれば流通も増える。その波が都心だけでなく、地方にも来てくれるといい」と望んだ。
県酒造組合の浦里浩司会長は「人口減少で国内市場縮小が見込まれる中、追い風になる。県民の方々も地酒に目を向けるきっかけになるのではないか」と語った。
県内では酒蔵の減少が続く。県のまとめによると、1970年に77あった酒蔵は、2023年には35に減少。地酒に対する県民の認知度調査でも「特に印象がない・分からない」との回答が約半数に上っている。
県産業技術イノベーションセンター(同県茨城町)は、高品質な県産酒の開発に向けた技術支援などを行う。無形文化遺産への登録勧告は「大きな弾み。酒造りの伝統を守り、インバウンドや海外展開まで見据えた支援を進めたい」と今後の活動に意欲を示した。