福島デブリ、茨城・大洗搬入 初の敷地外 1年かけ分析
日本原子力研究開発機構(原子力機構)は12日、東京電力福島第1原発2号機から試験的に取り出された溶融核燃料(デブリ)が同県大洗町の原子力機構大洗原子力工学研究所に搬入されたと発表した。福島第1原発敷地外への搬出は事故後初めて。遮蔽(しゃへい)した施設内で容器からデブリを取り出し、今後1年程度かけて性質や構造などを詳しく分析。今後のデブリ取り出しの工法検討などに活用する。
到着したデブリは5ミリ程度の小石状で重量は0.7グラム。容器は二重にした上でビニール樹脂製の袋で密閉し、さらに放射線を遮る容器に入れて輸送された。東電が輸送前に測定した放射線量は、作業員の被ばくを抑える目安の毎時24ミリシーベルトを下回る0.2ミリシーベルトだった。
東電によると、同日午前7時57分、デブリが入った容器をトラックの荷台に積み込み、同9時27分に福島第1原発を出発した。常磐自動車道などを経由して午後1時11分、同研究所に到着した。
その後、容器をクレーンでつり下げ、デブリの分析装置を備える同研究所内の照射燃料集合体試験施設(FMF)の放射線管理区域内に搬入し、同2時41分に輸送が完了した。FMFはX線CT検査装置や電子顕微鏡など複数の分析装置を備える施設で、通常は中性子を照射した物質や、高速炉の燃料開発に関する分析などを行っている。
原子力機構は13日朝に取り出し作業を開始し、デブリの状態を確認した上で、14日からデブリの表面などを測定する「非破壊分析」を行う方針。今後は非破壊分析結果を本年度内に、全体の分析結果を1年以内に発表したい考えを示した。
原子力機構は当初、デブリの採取量を数グラム程度と見込んでいた。実際の重量が0.7グラムだったことについて、「細かい粒子でもしっかり分析できた実績がある。今回の量でも必要な情報が得られると考えている。0.7グラムは非常に大きなスケール」と強調した。
福島第1原発のデブリは炉心溶融を起こした1~3号機で計880トンと推計されている。各号機で形状や堆積範囲は異なり、性質や状態など未解明な点も多い。
東電は分析データを炉内の状況把握や今後の取り出し規模拡大に生かす。2030年代初頭に3号機で本格的な取り出しを開始する方針だ。
東電は10月30日に格納容器底部にあったデブリをつかみ、11月7日に回収完了を発表。東電が8日に実施した原子炉建屋内での分析の結果、構外への輸送に問題がないと判断していた。