農業特化 生成AI開発 農研機構 データ収集 普及指導員を支援 茨城
農業・食品産業技術総合研究機構(茨城県つくば市、農研機構)は、農業知識を学習させた生成人工知能(AI)を開発した。全国の都道府県や農業団体などに呼びかけ、栽培技術を含む膨大なデータを収集し、学習させたのが特徴。農業分野に特化した生成AIとしては国内で初めて。農業者に技術指導や経営の指導を行う「普及指導員」を支援したい考え。
生成AIの開発は、同機構が中心となって計9者が集い、昨年11月から始めた。参加するのは北海道大、「キーウェアソリューションズ」(東京)、三重県農業研究所、石川県農林総合研究センター、佐賀県農業試験研究センター、岐阜県農業経営課農業革新支援センター、「ソフトビル」(熊本)、「ファーム・アライアンス・マネジメント」(東京)。
開発した生成AIは今年3月から、都道府県などを訪ね、栽培技術の指針や、病害虫の対策といった生産現場のデータを収集した。同機構農業情報研究センターの桂樹哲雄上級研究員(47)は「指導の記録や問題点などの蓄積が重要になってくる。客観的にデータを解析できる」と述べた。
全国的に普及指導員は地方の行財政改革などで減少してきたが、近年は横ばい傾向にある。農水省のまとめでは、2005年は全国で8886人だったのに対し、近年は6000人台で推移。22年は6132人にとどまる。茨城県も05年は258人に対し、22年は180人となっている。
同機構は、普及指導員が、農業者から現場で栽培技術などを質問された際、スマートフォンのチャット機能を通じAIを活用。その場で答えられる「ツール」として活用を見込んでいる。
先月21日から三重県のイチゴ栽培で試験運用を開始した。一般的なAIよりも4割増で正確に回答できることが確認された。今後、同機構などは、農業法人やスタートアップ(新興企業)などと連携し農業データの集積と生成AIの展開を進め、普及指導員の人手不足の支援につなげたい考え。試験運用を経て、他の作物への応用や全国展開を目指すという。
同機構農業情報研究センターの小林暁雄主任研究員(40)は「(各地の)現場にしかないデータが集められる」と特徴を強調。桂樹上級研究員は「データで先を読めて、判断につながる。農業分野に浸透していくことを期待したい」と述べた。