睡眠研究に遺伝子情報 心身不調防止へ 筑波大と東芝 茨城
眠りの質の向上や、睡眠不足による心身の不調をなくすための方法の確立に向け、筑波大国際統合睡眠医科学研究機構(茨城県つくば市)は21日、遺伝子情報を活用した研究を始めたと発表した。電機大手の東芝と共同で実施する。睡眠研究に遺伝子情報を盛り込むことは珍しいという。
東芝の従業員約5000人が睡眠中の脳波などを計測する専用の電子機器を装着し、データを収集する。遺伝子情報のほか、匿名化された医療情報や健康診断の結果を組み合わせ、特定の遺伝子と睡眠不足による慢性疾患との因果関係を調べる。
東芝が従業員の健康に関するデータを保有していることに着目した筑波大が提案し、研究が実現した。今回の研究ではその中から被験者を募る。
脳波や睡眠時間などを自宅で計測できる機器開発事業を手がける筑波大発ベンチャー企業「,SUIMIN(スイミン)」も参加する。被験者にはスイミンが提供するシール型の電極を額などに貼って寝てもらい、5日分の睡眠脳波を計測する。集めたデータは東芝が従業員の遺伝子情報、健康情報と組み合わせてデータを構築する。
寝不足が借金のようにたまって心身が不調になる「睡眠負債」は、高血圧やうつ病、認知症のリスクを高める。ただ、病気になりやすい人となりにくい人の違いなどは解明されていない。同機構は神経科学や医学的な知見を生かしてデータを解析する。睡眠負債に起因する疾患リスクとの因果関係を調べ、リスク予測法の開発につなげる。
筑波大で記者会見した同機構の柳沢正史機構長は「遺伝子情報を含むビッグデータが完成すれば世界初の貴重なデータベースになる」と述べた。