建設工事 トラブル増 紛争審査、茨城県内相談2.5倍 長引く交渉 負担重く
建設工事絡みのトラブルが増加している。「建設工事紛争審査会」では、2023年度の全国の申請件数が前年度比1.4倍に増加。茨城県審査会への相談数も同比2.5倍と急増している。県内で手抜き工事によるトラブルも報告されており、同県小美玉市の男性は請負業者に対し、調停を申し出る準備を進めている。交渉が長引く当事者の負担の大きさも浮かび上がる。
■迅速解決へ
工事のミスや手抜き、代金未払いなど工事請負契約のトラブルがあった際に迅速で簡便な解決を目指す専門機関「建設工事紛争審査会」が中央(国土交通省)と、各都道府県に設けられている。当事者双方の言い分を聴き、あっせん、調停、仲裁のいずれかの手続きで解決を図る。
中央審査会によると、昨年度の全国の審査会申請は143件で、前年度比42件増。前年度からの繰り越しを含めた取扱件数は249件で、同比32件増だった。当事者は個人発注者から請負人が30%と最多で、請負人から法人発注者が21%。工事種類は建築が78%、土木が13%、紛争類型別では工事代金の争いが47%、工事瑕疵(かし)が26%だった。
茨城県審査会事務局の県監理課によると、同審査会の取扱件数は2019年度から1~5件で推移。ただ、電話や面談での相談数は22年度の50件から昨年度は124件と急増している。担当者は背景について「(業者の)資金繰りが悪化し、(業者間の)代金支払いの滞るケースが増えたのではないか」と推測した。
■別の業者
小美玉市の農業、20代男性は昨年2月、近所の農機具店にガレージの建設を申し込んだ。全国に営業所を持つ資材メーカーの社員が現場の計測や見積書の作成を担当し、施工したのはさらに別の同県鹿行地域の業者だった。
男性が工事の様子を見たところ、土台を造るための穴が小さく、素材は約束していたコンクリートではなく、強度の低いモルタルであることが判明した。施工業者は手抜き工事を認め、「20年間同じやり方でやってきた」と話した。
■「全部なしに」
メーカーは見積書などに自社名の記載がないのにもかかわらず、男性との交渉窓口を名乗り出た。返金はされたが、ガレージ建設を前提として男性が申請した市の補助金分は補償されなかった。幹部らが代わる代わる来ても補償の話は進まず、時間を無駄に費やした。「会社を育てるような気持ちで勘弁して。全部をなしにしてほしい」と言われたこともあった。
メーカーは調停を提案してきたが、男性は弁護士と相談の上で請負業者である農機具店との調停を申し立てる準備をしている。男性は「物事が進まない時間は金銭的、精神的に負担があった」と話した。
県消費生活センターに寄せられた「工事・建築」の相談のうち、点検商法が含まれる「訪問販売」を除いた件数は19年度から64~93件で推移している。本年度は10月末現在で52件あり、このうち不具合や不良に関する相談は6件だった。