年収の壁見直し 茨城県内1220億円減収も 知事「サービス停止」
大井川和彦知事は22日、定例記者会見で、所得税が発生する「年収103万円の壁」が178万円に引き上げられた場合、茨城県内で年間1220億円の税収減となる試算を明らかにした。試算通りの減収となれば「多くの行政サービスが止まることになる」と懸念を示し、地方財政への配慮を政府に求めた。
県が2023年度決算見込み額をベースに、国民民主党が主張する非課税枠を103万円から178万円に引き上げた場合の住民税や地方交付税の税収額を試算した。
試算による減収額1220億円の内訳は、県分で個人県民税390億円、地方交付税130億円がそれぞれ減少すると推計。市町村分では個人市町村税が580億円、地方交付税が120億円それぞれ減る見通しとしている。
県税務課によると、23年度決算見込み額のうち個人県民税は1192億円。試算した県民税の減収額が3分の1を占めることに触れ、大井川知事は「とてつもない数字。しっかりと財源に対応することを前提とした壁の見直しが大事で、それが政府の役割」と述べ、今後の議論を注視していくとした。
103万円の壁の引き上げを巡っては、自民、公明、国民民主の3党が合意し、政府の経済対策に盛り込まれた。国民民主が求める178万円に引き上げた場合、地方自治体は4兆円程度の住民税に加え、所得税を原資とする1兆円強の地方交付税も失われることになり、行政サービスの低下が懸念される。全国知事会などは政府、与党に地方財政への配慮を求めるなどしている。
県内市町村でも警戒感が広がっている。筑西市の須藤茂市長は22日、会見後の取材に、税収減への懸念を示し「かなり影響はあると思っている」と説明した。一方で見直されれば手取りの増加につながることから、「複雑な気持ち」と話した。
神栖市の石田進市長も21日の会見で「しっかりと国に財源の議論をしてもらわなければ、地方にしわ寄せがくる」と危機感を示した。
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