選定療養費徴収 2日開始 茨城県内、不要不急の救急搬送 医師が判断 受診控え懸念も
緊急性のない救急搬送患者から「選定療養費」を徴収する茨城県主導の取り組みが2日、県内で始まる。都道府県単位では初の取り組み。大病院の約9割が参加し、緊急性の有無は現場の医師が指針に基づき判断する。救急車の適正利用により、救急医療の逼迫(ひっぱく)を回避するのが狙い。救急要請すべきか判断する参考になるよう、県は救急電話相談の利用を促進する。
県医療政策課によると、選定療養費は一般病床数が200以上の大病院を紹介状なしで受診した際にかかる追加料金。県内の病院ではこれまで、救急車で運び込まれた患者から徴収していなかった。今回の取り組みは県内25の大病院のうち22病院が参加。請求額は1100円の1病院を除き、7700円~1万3200円を設定する。
緊急性の判断基準を巡っては各病院などと協議し、指針を作成。軽度の切り傷や擦り傷は「明らかに緊急性が認められない」とした。打撲など計10症状は、単独症状の場合は「基本的に認められない」とし、評価が難しいケースは認めても問題ないとした。いずれも診断結果ではなく、要請時にさかのぼり現場の医師が緊急性を判断する。
消防庁の調査で、県内の昨年1年間の救急搬送数は過去最多の14万3046件。このうち緊急性の低い搬送が含まれる「軽症等」は約半数の6万8549件(いずれも速報値)だった。搬送の6割以上が大病院に集中している。
こうした現状や要請件数が冬場にピークを迎えるのを踏まえ、県は12月開始を目指した。取り組みを実施する方針は7月下旬に公表。関係機関と調整し、10月下旬から広報紙やネット媒体などで情報提供してきた。
一方で、一部の医師などから受診控えを懸念する声が出たほか、県議会の保健福祉医療委員会で周知期間や議論の不足を指摘する意見が出ていた。
県は円滑な運用に向け、救急電話相談「#7119(おとな)」「#8000(子ども)」の活用を推進。2日以降の日曜・祝日や年末年始は、時間帯によって回線数を2倍以上に拡大する。
徴収に関しては月1回、事例や対応に困ったケースなどを関係機関で共有し、検証や改善をする。
同課の担当者は「救える命が救えない事態を回避するための制度。県民の理解が進むよう、今後も周知を徹底していきたい」と話している。