酒造り輸出追い風 ユネスコ登録 茨城県、視察や技術開発後押し
日本の「伝統的酒造り」が5日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。茨城県の酒造関係者は輸出の追い風になるとし「酒造りの技術を伝える中で、今後の拡大につなげたい」と意欲を示す。県は酒造りの歴史や技を直接伝える「視察招聘(しょうへい)」や品質を保つ技術開発を通じ、他地域との違いをアピールして、茨城県酒蔵の海外進出の後押しする。
「ユネスコの登録は日本の酒造りの技術を国内外に知ってもらう好機だ」
1790(寛政2)年創業の吉久保酒造(同県水戸市)は「うま味のある辛口」が基本の酒造りが特徴。近年はデータを活用し、酒造りの工程で「もろみ」をしっかり発酵させつつ、うま味を残す技術を確立させた。
2005年以降は「水戸の酒で世界と勝負したい」と、輸出に力を入れる。これまで欧米やオーストラリア、韓国、台湾、タイ、シンガポールなどの市場を開拓。今年は同社の銘柄「一品純米大吟醸」が、大谷翔平選手らが所属する米大リーグ・ドジャースの本拠地・ドジャースタジアム(ロサンゼルス)VIPルームで提供され始めた。
現在、同社は売り上げの4割を輸出が占める。だが12代目の吉久保博之社長(44)は「酒造りの工程や技術は、まだまだ知られていない」。ユネスコ登録を機に「おいしい日本酒を造る技術に関心を高めたい。輸出促進につながれば」と期待する。
茨城県内には酒蔵が38あるが、出荷は国内の特定の取引先が主。国税庁の統計によると、18年度の清酒(日本酒)の製造量3255キロリットルに対し、輸出量はわずか145キロリットルに過ぎない。酒蔵は多くが中小事業者で、生産量を急に増やすのは難しく、輸出までなかなか手が回らないのが現状だ。
こうした中、県は輸出拡大に向けた支援策に取り組む。海外の飲食店や事業者を招く「視察招聘」を実施し、歴史や酒造りのこだわりを紹介。全国の酒蔵との違いを印象付け、茨城県産を選んでもらう戦略を進める。
県産業技術イノベーションセンター(同県茨城町)は日本酒の抗酸化能を20%高め、香りが劣化するのを抑える「ひたち酒(さけ)乳酸菌」を開発した。この乳酸菌を利用することで、品質が落ちにくい伝統的な技法「生酛(きもと)造り」が行いやすくなるという。また、日本酒の成分について一部の国で規制があるが、同センターはより輸出に向いた品質にできる酵母を開発。酒蔵への普及を進める。
センターの担当者は「国内の飲酒人口が減り、輸出(拡大)は避けられない」とした上で「技術面で品質の安定化を後押ししていきたい」と強調。県加工食品販売チームも「酒蔵ごとに育まれた茨城県の酒造りの文化や個性をPRし、市場を開拓して輸出額の増大を図る」としている。
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