高速トンネルでCO2回収 茨城大と中日本高速 実験開始へ
茨城大カーボンリサイクルエネルギー研究センター(茨城県日立市)は、中日本高速道路(愛知県名古屋市)と共同し、高速道路トンネル内で二酸化炭素(CO2)を回収する技術の実証実験を始める。「湿度スイング法」と呼ばれる技術で、高速道路での実証実験は国内初。同大の田中光太郎センター長は、同法の技術的な応用は広範にわたるとし、「実現、普及すれば社会が現在の生活様式を維持したままCO2の排出量を抑えることができる」と指摘している。
■水に溶ける
同センターは2050年のカーボンニュートラル実現に向け、カーボンリサイクル技術の開発などに取り組む研究拠点。中日本高速道路は今年7月に、高速道路で初めて環境配慮型コンクリートを用いて防護柵を設置するなど、環境負荷軽減の取り組みを積極的に進めている。
湿度スイング法は、水に溶けやすいCO2の性質に着目した技術。空気中に含まれるCO2を乾いたフィルターに吸着させた後、フィルターに水をかけることで、水に溶けて流れるCO2を回収する仕組み。最終的に水とCO2を分離する。
■場所選定へ
同センターによると、換気設備によって常時一定方向に空気が流れる高速道路トンネルは実験に適している。実験装置はCO2を吸着させるフィルターのほか、CO2をフィルターから脱離させるための給水設備などを備える。低エネルギーで効率的にCO2を回収するシステムの構築を目指している。
現在、実験装置の設置場所や時期などの選定を進めている。本年度中に実験装置の設置を目指し、1年間当たり約0.5~1トンのCO2の回収を見込む。課題はフィルターの乾燥とCO2回収のサイクルという。フィルターに適した材質の選定などについても今後、研究を進める。
■リサイクル
「脱炭素社会」に向けた取り組みが進む一方で、大型船舶や自動車、飛行機のエンジンなど一部の工業機器は、今後も燃焼エネルギーを利用しなければならないとみられている。
田中センター長は「CO2を新たな資源として有効活用する『カーボンリサイクル』を利用していくことも重要」と指摘。大気に一度放出されたCO2を回収し貯留、再利用していく上で、今回の共同研究が重要になると強調した。