アボカド念願 初収穫 県北起業協力隊 赤羽さん・神田さん 遊休地活用 日立特産品へ 茨城
茨城県日立市に移住してアボカド栽培に取り組んできた青年2人が今季、試行錯誤の末に初めて収穫を迎えた。挑戦を始めて2年半。収量はまだまだ少ないが、新たな特産品として産地化を目指しており、耕作放棄地などの社会課題にも真剣に向き合っている。
■冬越しが重要
2人は「Piece's FARM」の赤羽悠斗さん(27)=神奈川県出身=と、神田駿介さん(39)=北海道出身。県の県北起業型地域おこし協力隊を務めている。
2022年5月から市南部の茂宮地区に遊休地を借り、ビニールハウスでアボカドの15品種、約100本を鉢で育てている。引退した農家が使っていたハウスはビニールを張り直し、荒れた内部を重機で掘り起こすところから始めた。
アボカドは100枚の葉に対し実1個がなるとも言われる。これまでは成長を優先してつぼみを摘み取ってきた。腰の高さだった苗木は現在、2メートルほどになり、一部の木が実を付けるところまできた。
今季収穫できたのは「ピンカートン」という品種で、取れた実は3個。それでも2人は「収穫できたことが大きい。きちんとやれば取れると分かった。これを繰り返せば収量はおのずと上がってくると思う」と自信を深める。
アボカドは寒さに弱いため、冬越しの作業が重要になる。ビニールを二重にして保温効果を高め、ストーブを使って室温が3度を下回らないよう管理。夏は室温が40度近いハウス内で毎日2時間ほどかけ、たっぷり水をやるなど地道な作業の連続だったという。
■留学で出会う
2人は16年、留学先のフィリピンの語学学校で出会った。途上国の貧困問題に関心があり、解決手段の一つとして現地に自生していたアボカドに注目した。栄養価が高く、人気のある作物は「資産になる」と考えたという。
帰国後に「消滅可能性都市」とされる全国の60近い都市を2人で回る機会があり、手入れされなくなった田畑や山林を見て「国内の問題もアボカドで解決できるのでは」と思った。旅先の一つに日立市があり、協力隊の仕組みを使って移り住んだ。
新たな特産品は「ひたちアボカド」と名付け、産地化に向けて栽培ノウハウの普及にも力を入れる。今年に入り新たに研究会を発足。茂宮地区以外にも苗木や温度計を置き、生育に適した環境を調べ始めた。参入のハードルが低い路地栽培が可能かどうかや、効果的な霜よけ対策などを見極めていく計画だ。
■自伐型林業も
山間部の同市中里地区では自伐型林業も手がけており、間伐材はハウスでストーブの燃料などとして有効活用し、生ごみの堆肥化にも取り組む。来季は100個の収穫を目標にしており、将来的にはこの地域に適した3~5品種を確定させる考えという。
地域住民と関わりながら交流の輪を広げている2人。「市場に出すまでもう少し時間はかかるが、将来的には地域に人に食べてもらい、愛される作物としてこの地に根付かせたい」と夢を描く。