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水害軽減へ田んぼダム 排水器具設置に茨城県補助 農家電気代負担抑制も

排水量を調整する「落水升」が設置された水田=茨城町内
排水量を調整する「落水升」が設置された水田=茨城町内


水田に降った雨を一時的にため、洪水被害を軽減する「田んぼダム」が茨城県内で広がり始めた。大規模工事が必要なダムや堤防と異なり、水田に器具を設けることで効果を発揮する。県は本年度、水田の排水量を調整する「落水升」の設置費用を全額補助する事業を開始。冠水時などに川へ水を流す排水機場の運転を抑制し、農業者が支払う電気代の負担軽減につなげる。

田んぼダムは、水田が持つ貯水機能を利用して、豪雨時に多くの水を一時的にためる。水田から流れる水の量を調整できる落水升を設置し、排水路や河川への水の流出を遅らせ、洪水被害を軽減する仕組みだ。

県内では、久慈川や那珂川などが氾濫した2019年の東日本台風(台風19号)、県北地域に甚大な被害をもたらした昨秋の台風13号など水害が頻発化、激甚化する傾向にある。県河川課は「田んぼダムは大雨被害を減らす手段の一つ。短期間で取り組め地域の安全につながる」と期待を込める。


全国で普及が進み、茨城県は国や県などが主体となって22年度は水戸市、常総市、結城市の3市で計106ヘクタール、23年度は茨城町、笠間市などで計114ヘクタールの田んぼダムが整備された。

今回補助の対象となるのは、近年の豪雨で浸水被害があった地域などで、農業者が電気代を負担している土地改良区。国の交付金を活用し、県が水田に設置する落水升の購入費と工事費を全額補助する。予算額は総額1億3600万円。

県は11月下旬までに、要件を満たした同県常総市の「江連八間土地改良区」と同県茨城町の「ひぬま川土地改良区」の二つの土地改良区に交付を決定。新たに計約413ヘクタールの水田に広がる見込みだ。


涸沼川が近くを流れる「ひぬま川土地改良区」は県の補助金を活用し、茨城町駒場地区と下石崎地区の計250ヘクタールで実施した。来年の田植え前に整備が終了する予定という。

内田勝則事務局長(64)は「農業者の負担なく設置できる。電気代の負担軽減につながればいい」と喜ぶ。茨城町農業政策課は「治水対策で効果が出る。上流でも広がればいい」と期待を寄せる。

同町小堤地区は昨年度、国営緊急農地再編整備事業を活用して約30ヘクタールの水田に落水升を設置した。同地区で約9ヘクタールを栽培する芝沼誠文さん(66)は「(板を入れたり外したりするだけなので)水位調整の管理が楽になった。コメの収量に影響はない」と語る。県によると、すでに取り組みを始めた地区でも生育に影響はないという。

田んぼダムの拡大には、認知度の低さが課題だ。県農村計画課は「(各地区の)成果を伝えながら、農業者と協力して面積を広め、洪水被害軽減につなげたい」と話した。



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