アートで住民交流 取手・井野団地 地元芸術家と企画実践 茨城
都市再生機構(UR)が管理する茨城県取手市の取手井野団地で、地元の芸術家や住民によって新たなコミュニケーションの場をつくる社会実験が始まった。同団地は高齢化が進み、コミュニティーの維持が課題だ。来年夏までの間、団地に必要な機能を探り、持続可能な仕組みを検討していく。
同団地は1969年に当時の日本住宅公団が茨城県で初めて建設した大型賃貸住宅。ピーク時の76年には子育て世帯を中心に2145世帯が暮らした。その後、子が独立して高齢の親世代が残り、団地の高齢化率は約50%(今年10月現在)に上った。高齢化に伴い自治会活動も縮小し、住民のつながりも希薄になりつつある。
今回始まったプロジェクトは「そうぞうする団地」。同団地を拠点の一つにするNPO法人「取手アートプロジェクト(TAP)オフィス」が実施する。アーティストや市民を支援し、コミュニケーションづくりの企画を実践してもらう。
募集対象は市内在住か、同市に関わりのある個人と団体に絞った。これまでもTAPはアーティストを呼んで交流イベントを展開してきたが、単発で終わる面も見られた。今回、取手に関わる人の参加で、持続的な活動にしたい考えだ。
プロジェクトの第1弾が11月14、15日の2日間、団地内の交流拠点で行われ、アーティスト2組と団地住民1人が参加した。外では屋台とボードゲームブースが出た。
東京芸術大取手キャンパスで現代アートを研究する大学院生の佐藤利香さん(23)と、橋本真那さん(24)がワークショップを開催。団地住民ら約10人とジェスチャーを活用した交流を試みた。
団地の本橋幹夫さん(77)は「自然体でいられた。ジェスチャーがあれば会話のハードルも低くなる」と感想を語った。
佐藤さんは「居心地のよい団地生活のために影響を与えたい」、橋本さんも「面白い身ぶりを拾って表現することで対話の手助けになればいい」とそれぞれ話す。
実験は来夏までで、団地に求められるコミュニケーションの場を探り、定着可能なものを模索する。
TAPオフィスの羽原康恵包括ディレクターは「団地を支える新たな担い手が必要。地域に関わりたい人を支援し、つながりを生み出す持続可能な仕組みをつくりたい」と説明する。