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水戸刑務所、避難所に 自治会と災害協定 茨城・ひたちなか

災害協定の締結式に臨んだ水戸刑務所の原田博所長(左)と市毛北自治会の瀬田信明会長=ひたちなか市市毛
災害協定の締結式に臨んだ水戸刑務所の原田博所長(左)と市毛北自治会の瀬田信明会長=ひたちなか市市毛


水戸刑務所(茨城県ひたちなか市市毛)と地元の市毛北自治会は、災害時に刑務所の一部施設を避難所として開放する内容を盛り込んだ災害協定を締結した。同刑務所が地元の団体と災害協定を結ぶのは初めて。地域への貢献を通じて、住民が刑務所に抱く「怖い」「危ない」といった負のイメージを払拭し、受刑者の出所後の社会復帰と更生を後押しする狙い。自治会側も住民の高齢化で近場の避難所の確保が課題となっていた。両者は共生の深化に向けて、新たな一歩を踏み出した。

■収容区域外

同刑務所の担当者によると、避難所として開放するのは、刑務官の鍛錬所(約565平方メートル)と待機所(約187平方メートル)、駐車場の3カ所。いずれも受刑者の収容区域外。鍛錬所は体育館のように広く、災害時には簡易式の段ボールベッドと仕切りを使って大人数を収容できる。待機所は和室の個室が計8室あり、高齢者や乳幼児を連れた家族連れも安心して避難できるという。刑務所の運営に支障のない範囲で、備蓄している食品や水も提供する。

11月7日、協定式が同刑務所で行われた。同刑務所の原田博所長と同自治会の瀬田信明会長が出席。協定式で原田所長は、「矯正行政に対する地域社会からのご理解ご支援を受けるためには、まずわれわれから地元自治体が持つ課題に対し積極的に貢献していく姿勢が必要だ」などと話した。

■共生深化

同刑務所は以前から県内で災害支援を行ってきた。2019年10月の東日本台風や昨年9月の台風13号では、職員が災害ボランティアに参加。同自治会にも加入し、防災訓練などに参加してきた。地域との共生を深めようとする中で、住民の関心が高い防災分野での協定締結に至った。

災害協定締結は、地区の住民にとっても渡りに船だったという。瀬田会長によると、自治会に加入する約870世帯のうち、住民の大半は高齢者。災害時の指定避難場所は地区の東南部にある公立中学校で、北西部の住民からは「遠すぎる」「歩いてけない」などの声が上がっていた。ほかにも避難できる場所を探していたところ、地区の北西部にある同刑務所から協定の話を受けた。避難所の開設作業の一部も刑務所側が手伝ってくれることになり、「大変助かった」と感謝する。

■社会復帰へ

課題も残る。瀬田会長によると「受刑者がいる場所に避難するのは怖い」と話す人もいるという。両者は今後、住民参加型の避難訓練を行ったり、施設見学会を開いたりして、被収容者が簡単には抜け出せない施設だと知ってもらい、不安の解消に努める。瀬田会長は「刑務所や受刑者への偏見をなくし、施設とともに歩んでいきたい」と語った。

受刑者に対する世間の冷たい目が、出所後の再就職や居住先探し、その後の暮らしなどさまざまな面で立ちふさがる。「刑期を終えて出所しても、地域から仲間外れにされて社会復帰できなければ、また罪を犯して新たな被害者を生んでしまいかねない」と原田所長。地域の理解と協力が、受刑者の社会復帰を支え、再犯防止の鍵になるという。「災害協定をはじめあらゆる機会を通じて刑務所のことを知ってもらい、受刑者たちが戻りやすい環境にしていきたい」と力を込めた。



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