《連載:茨城県内2024 10大ニュース》衆院選、野党系躍進
■自民王国 過半数割れ
第50回衆院選は10月27日に投開票され、自民、公明両党の獲得議席数は215と公示前から大幅に減らし、定数465の過半数(233)を割り込んだ。自民党派閥裏金事件をはじめとした「政治とカネ」の問題が大きく響いた。一方、立憲民主党は公示前から50増の148議席、国民民主党は同4倍の28議席に伸ばすなど、野党の躍進が目立った。
同1日に新政権が発足すると、石破茂首相は就任後の最短日程で衆院選に踏み切った。裏金事件のダメージを最小限に抑える狙いがあったが、党の公認を巡り「政治とカネ」の問題が再燃。選挙戦終盤には非公認候補が代表を務める支部に対し2千万円の活動費支給が明らかになり、「逆風にさらなる追い打ち」(自民関係者)をかけた。
自民は茨城県内選挙区の「最重点区」に位置付けた1、6、7区でいずれも敗退。「重点区」とした3、5区のうち、5区は比例復活も逃し、計3勝にとどまった。獲得議席数が過半数を割り込んだのは、民主党政権が誕生した2009年以来の15年ぶりで、「王国」は揺らいだ。
県内で裏金に関わる議員はいなかったものの、選挙当初から政治とカネを巡る厳しい逆風にさらされた。「クリーンな政治」「間違いなく政治改革を進める」など、各候補者は政治不信の払拭を強調したが、約4万3千人と全国4番目の党員数を誇る組織力をもってしても、苦しい戦いを強いられた。
一方、野党はこうした勝機を逃さなかった。立民が6区で悲願となる選挙区初勝利を上げたほか、国民も前回に引き続き5区の議席を堅持した。無所属も含め、非自民系で計4勝と自民に勝ち越す結果となった。
立民や共産などの野党が候補者一本化を図った前回21年の「共闘」は見送られ、一騎打ちに持ち込んだのは7区のみにとどまった。それでも、終盤には立民の野田佳彦代表や国民の玉木雄一郎代表らが相次ぎ来県し、政治改革を争点に攻勢を畳みかけるなど、政権批判の受け皿として支持を得た。
無所属候補は1、7区で勝ち上がった。衆院制度が現行制度となった1996年以降、県内の小選挙区で2人の無所属候補が当選するのは初めてだった。
このうち7区では、自民の永岡桂子氏と計6回に及ぶ激しい戦いを繰り広げ、「無敗の男」と呼ばれた中村喜四郎氏が選挙1カ月前に引退を表明。長男の勇太氏が後援組織「喜友会」を引き継ぎ、永岡氏を制した。
来夏には参院選が控える。衆院選で大きな争点となった「政治とカネ」を巡る問題が、どこまで影響を及ぼすかも焦点の一つになりそうだ。