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《ニュースを追って》キャベツ盗「まるで海賊」 茨城県西地区で連続大量被害 価格高騰で標的、複数犯か

一晩にして約1200個のキャベツが盗まれた畑=八千代町
一晩にして約1200個のキャベツが盗まれた畑=八千代町


茨城県の県西地域で冬キャベツの大量盗難がこの1週間で相次いでいる。14日夕方から翌15日朝までの間に、古河市の農家で1200個が盗まれたのを皮切りに、結城市と八千代町で連日盗難があった。猛暑の影響などで出荷量が落ち込み、取引価格は例年の数倍に跳ね上がっている。手塩にかけて育てたキャベツを奪われた生産者は、行き場のない怒りを募らせる。いずれの現場でも犯人は捕まっておらず、県警は県内の農家に警戒を呼びかけている。

■収穫目前1200個

「1、2個ならかわいいものだけど、とんでもない。海賊に襲われたようだ」

八千代町で、家族3人でキャベツを育てている男性(70)は悔しさをにじませる。収穫間近だったキャベツ約1200個を一晩にして盗まれた。

18日朝、男性が畑の周辺を巡回していたところ、被害に気付いた。前日の夕方に確認した時には無事だったという。

盗まれたのは、「冬藍」という品種で、寒くなるほど甘みが増すという。暑さに弱く、今年は猛暑の影響で苗の植え直しをした。カメムシの大量発生による虫害への対策にも苦心した。大玉に育ち、食味もよくできた自信作だった。「19日に出荷し、孫娘への贈り物の資金に充てようと思っていた」と、収穫目前の盗難に悔しさをにじませる。

キャベツは根元から、刃物のようなもので切り取られていた。「1人でこの量を取るには夜通しかかる」と男性。約50年キャベツを栽培していて、これほど大量に盗まれたのは初めてという。「プロの犯行だ。絶対に許せない」

■1キロ平均386円

事件の背景にあるとみられるのが、冬キャベツの高騰だ。国の「食品価格動向調査」によると、12月9~11日までのキャベツの小売価格は1キロ当たり平均386円。平年の約3倍高くなっている。

県内の市場でも状況は同じだ。坂東市の青果市場「岩井中央青果」によると、19日の高値は10キロ2500円だった。前年までは500~1000円で推移していたという。市場の担当者は「猛暑と雨不足で主産地の愛知県などで生産量が落ち込み、小玉傾向。加工業者などから引き合いが強く、値が上がっている」と話す。

野菜や果物は、一見して盗品かどうかは分からない。生鮮食品のため、転売するにも時間をかけられない。ある市場関係者は「こちらも商売。量があって質がよければ、急に大量に持ち込まれても買うことはある」と明かした。

■見回り強化

捜査関係者によると、持ち出した量の多さなどから、複数犯の可能性が高いとみられる。畑から複数の足跡が見つかった現場もあった。

いずれの現場でも犯人は捕まっていない。下妻署や結城署は、被害拡大を防ぐため、夜間の見回りを強化する。八千代町は防災行政無線で、キャベツやハクサイなど冬の農作物の盗難に警戒を呼びかけ始めた。

県警は19日、キャベツの写真入りの盗難被害の防止を呼びかけるチラシを作成した。防犯対策として、定期的な見回りや収穫物の保管庫の施錠、防犯カメラやセンサーライトの設置を紹介している。県内のJAを通して、農家に配っていくという。県警担当者は、「収穫時期が狙われやすいのはキャベツに限らない」と説明。「不審な人や車両を見かけたら110番してほしい」と呼びかけた。



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